2008年10月2日(木)「しんぶん赤旗」
米金融支援法案 反対した議員
“ウォール街のつけ回すな”
民間資金で回復の法案要求
【ワシントン=鎌塚由美】ブッシュ政権が早急な成立を促したにもかかわらず、金融支援法案は下院で九月二十九日に否決されました。反対した議員たちは同日、それぞれ反対理由を述べました。
同法案の否決には、共和党議員の反対票が大きく寄与しました。有権者からの「怒りの声」を理由にあげたのは、ランディ・クール議員(ニューヨーク)。同議員の選挙区(同州北東部)から「千二百以上」の反対表明の電話やメールがあったとして、「一生懸命働く米国民の食費やガソリン代を、向こう見ずなウォール街に明け渡せと要求する法案」に反対したと表明しました。
デビッド・ライヘルト議員(ワシントン州)は、「あわてた行動より、正しい法案がより重要」だとし、「民間資金で回復する包括的法案」を要求。米議会はすでに、住宅供給公社や大手保険会社に約三千億ドルもの公的資金を投入していると述べ、「今回の七千億ドルのギャンブルが、納税者の負担による別のギャンブルでないとの保障があるのか」と批判しました。
政府による公的資金投入策は「市場による解決」を妨げると主張したトム・フィニー議員(フロリダ)は、「ウォール街の経営責任者による投機のつけを支払うのは米国民ではない」と述べました。
民主党の進歩派議員からは、ブッシュ政権の規制緩和路線を批判し、投機家の規制を求める声が出ました。バーバラ・リー議員(カリフォルニア)は、金融危機をもたらしたのはブッシュ政権の「向こう見ずな規制緩和路線」だと指摘。住宅ローン破たんをもたらした貸し手のために一票を投じることはできないと表明しました。
クシニチ議員(オハイオ)は、法案は「事実ではなく、不安をあおることで推進されている」とし、ばく大な金額がつぎ込まれる法案が、ほとんど審議もされないまま推し進められたと批判。米議会の役割は「問題を引き起こした投機家をストップさせる」新法案の作成だと語りました。
血税投入に怒り61%
世論調査
【ワシントン=小林俊哉】国際的に波及した米金融危機をめぐり、米上院は九月三十日、下院で否決された金融機関救済法案を一日夜(日本時間二日午前)に採決することで合意しました。
ただ、銀行救済に巨額資金を投入することへの米国民の厳しい視線は変わりません。同日発表された世論調査会社ピュー・リサーチ・センターの調査では、法案を支持すると答えた人は、この五日間で12ポイント減少して45%でした。血税投入に怒りを感じると答えた人は61%に上っています。
これに対しブッシュ政権は、今回の措置が金融システムを守るものだと強調。三十日に記者会見したマコーマック財務次官も「(銀行)救済策ではないとはっきりいいたい」と繰り返し理解を求めました。しかし、七千億ドルもの税金を投入する根拠を聞かれると、「一連のいろいろの分析に基づくもの」と述べるだけでした。
この事態に米メディアからは、金融危機に加え、「政治の信用の危機」(『タイム』誌電子版)、「リーダーシップの瓦解」(ニューヨーク・タイムズ紙)、「従う者なき指導者たち」(『ウィークリー・スタンダード』誌電子版)と米国政治の行き詰まりへの指摘がいっせいにあがっています。