2008年10月2日(木)「しんぶん赤旗」

主張

C型肝炎訴訟合意書

薬害根絶と患者救済へ最善を


 薬害C型肝炎訴訟の全国原告団・同弁護団が九月二十八日、被告企業の「田辺三菱製薬」(大阪市、旧ミドリ十字)と子会社「ベネシス」(大阪市)との間で、訴訟解決のための「基本合意書」に調印しました。

 合意書は、企業側が感染被害の発生と拡大を防げなかった責任を認め、被害者と遺族に謝罪する内容です。「再発防止に最善かつ最大の努力を行う」とも表明しています。製薬企業は、合意書と原告の訴えを重く受け止め、薬害の根絶と肝炎被害者の救済・再発防止に最善を尽くすべきです。

試される企業の姿

 薬害C型肝炎はウイルスに汚染されたフィブリノゲン製剤や第九因子製剤が、出産や手術のときに止血目的に投与されたことから生じました。フィブリノゲンは出産時の出血に大量に使われ、多くの母親が感染しました。感染すると高い割合で慢性肝炎になり、年月を経て肝硬変、肝がんに進行し、命が脅かされる恐ろしい病気です。

 初期症状が軽く、感染に気づきにくい病気で、長期にわたって被害者に感染情報が伝えられず、適切な措置がとられなかったために被害を拡大し、症状を悪化させました。推定で約二十八万人に汚染された血液製剤が投与され、一万人が薬害C型肝炎に感染させられたと見られます。

 アメリカでは一九七七年、フィブリノゲン製剤は感染リスクが高く、有効性も疑わしいことなどから、製剤の承認が取り消されました。日本では製薬会社が危険性を軽視し、十分な警告もしないまま、血液製剤を製造・販売しつづけました。人間の命と健康をないがしろにしてきた製薬企業の責任は、きわめて重いものがあります。

 国も製剤の製造に承認を与え、危険が明らかになっても承認取り消しなど適切な措置を怠りました。国がフィブリノゲン製剤によるC型肝炎の感染について緊急安全情報を出したのは、アメリカの承認取り消しから十年後の八八年でした。国の対応がC型肝炎をまん延させたのは明らかです。

 C型肝炎訴訟の原告らは二〇〇二年十月、東京・大阪両地裁に提訴していらい五高裁、八地裁で製薬会社と国の責任を追及してきました。原告は千六十人(九月二十八日現在)と、推定被害者の一割にとどまっています。それは年月がたっていてカルテなど医療記録が破棄され、血液製剤の投与が確認できず、原告になれないでいる被害者が多いからです。

 原告らの粘り強い活動で、今年一月には被害者救済法が成立し、翌二月には国との間で和解基本合意が成立しています。田辺三菱など被告二社が合意書に調印したことで、肝炎問題解決の土台が築かれました。これから製薬企業の姿勢が試されます。

政官業の癒着を断て

 病を押して命がけで政府や国会議員、企業への要請を繰り広げてきた原告・患者の切実な声に応えるときです。政府はもちろん企業も被害者全員の救済と再発を防ぐ恒久対策にとりくむべきです。B型などを含め、すべての肝炎患者の救済が求められます。

 薬害を引き起こした大本には、利益最優先の企業体質と政・官・業の癒着があります。癒着構造を断ち切ることこそが、原告らの努力に報いることになります。


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