2008年10月1日(水)「しんぶん赤旗」
金融界に世論そっぽ
ギャンブルの後始末に税金投入か
銀行でなく国民にこそ資金援助を
【ワシントン=小林俊哉】米民主、共和両党の議会指導部がブッシュ政権側と合意していたにもかかわらず、米下院が九月二十九日、金融機関から不良資産を買い取る法案を否決した背景には、有権者の厳しい視線があります。
米下院の公的資金投入法案否決
共和党に近い世論調査会社ラムッセン・レポートの調べでは、法案に賛成と答えたのはわずか24%。市場調査会社ハリス・インターアクティブの調査でも、米金融界は金もうけのためなら何でもするだろうと答えた人が63%に上りました。そんな金融界のギャンブルの後始末をさせられることへの有権者の忌避感がうかがえます。
与党でも造反
金融法案は七千億ドル(約七十五兆円)の公的資金で不良資産を買い取るというものです。大統領選と同時に行われる総選挙を控えた下院議員にとって、国民一人当たり二千三百ドル(約二十四万円)もの税金を投入する法案に賛成することは「自殺行為」と指摘されていました。
議会の進歩議員連盟はすでに二十四日、金融法案についてペロシ下院議長に書簡を送付し、法案に反対を表明していました。書簡は「回避可能だった今回の金融危機を引き起こした第一の責任があるのも、それで金もうけしたのも、ウォールストリートの相場師や投資家だ。米国の納税者ではなく、彼らこそが穴埋めを求められなければならない」と強調していました。
ブッシュ大統領が提案した法案に政権与党の共和党が強く反対したことも注目されます。大統領自ら、採決直前まで同党議員に電話で支持を求めたにもかかわらず、三分の二も反対に回ったことで「大統領にとって破滅的な政治的敗北」(ニューヨーク・タイムズ紙)との指摘も出ています。
「支配終えん」
法案の行方をめぐってさらに議会と政権側の交渉が続く見込みです。大統領候補のオバマ、マケイン両上院議員も、法案成立に向けて交渉をすすめることで一致していますが、先行きは不透明です。
世界経済に大きな影響を与える問題で米国中枢が右往左往している現実を前に、政権に近いシンクタンクからも「米国の(経済的)支配の終わりを意味するかもしれない」(アメリカン・エンタープライズ研究所のアップルバウム氏)とする論調も出始めています。