2008年10月1日(水)「しんぶん赤旗」

「新興国」に削減義務

温暖化防止次期枠組み 日本政府提案へ


 政府は三十日までに、地球温暖化防止の次期枠組みに関する新提案をまとめました。京都議定書で温室効果ガス削減義務が課されていない発展途上国のうち、経済成長が著しくガス排出量が多い中国やインドなどを「新興国」として別扱いし、エネルギー効率目標などの削減目標を義務付けるもの。関係国の反発を招き、次期枠組みをめぐる今後の国際交渉を難航させることは必至です。

 新提案は、各国を「先進国」「新興国」「途上国」に三分類。先進国には引き続き国別総量削減目標を義務付ける一方、新興国には同目標は課さないものの、エネルギー効率について拘束力ある目標を義務付けます。

 また「卒業」制度を設け、一人当たりの国内総生産(GDP)や排出量などが増えれば「新興国」から「先進国」に移行させるなど、より厳しい義務が課せられるとしています。

 新提案は、十二月にポーランド・ポズナニで開かれる国連気候変動枠組み条約第十四回締約国会議(COP14)で議論されます。


解説

反発必至の「原則無視」

 地球温暖化防止は全人類的課題であり、地球上のすべての国が全力を挙げて達成すべきものです。しかし今日の温暖化に主要な責任を負うのは、産業革命以降、先に工業化した先進国です。他方で途上国は、貧困からの脱却のために経済発展する権利を確保しつつ、温暖化防止の対策を講じる必要があります。

 これは、先進国と途上国が「共通に有するが差異のある責任」を負うという原則として、一九九二年の地球サミットで採択されたリオ宣言と気候変動枠組み条約、九七年採択の京都議定書で、繰り返し確認されている根本的な規定です。

 この原則は、京都議定書の第一約束期間が終わった後の二〇一三年以降の次期枠組みでも継承されるべきです。具体的には、先進国側が、二〇年までに九〇年比で25―40%削減するというような大幅削減を誓約し、それを確実に実施する政策、措置をとることが先決です。そうしてこそ、主要途上国の次期枠組みへの積極的参画を促す条件ができます。

 ところが政府は「主要排出国の参加が最優先課題だ」として、「共有するが差異ある責任」原則を棚上げする主張を繰り返しています。安倍晋三元首相が昨年提示し、政府の立場の出発点となった温暖化対策「クールアース50」でも、この原則の否定が目標の一つだったことは、当時の塩崎恭久官房長官が告白しています(『国際問題』今年六月号)。

 麻生太郎首相は二十九日の所信表明演説で、温暖化問題で「国際的なルールづくりを主導していく」と宣言しました。しかし、これまで確認されてきた原則の無視は「ルール破り」です。新提案が中印両国などの反発を招くのは必至です。(坂口明)



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