2008年9月29日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

国産木材で家つくろう


 中小零細の建築業者が「国内、県内の木材で住まいづくりを」を掲げ、仕事確保、地球温暖化防止をめざして活動しています。兵庫県加古川(かこがわ)市の協同組合もりの木ネットワーク(安村義光理事長)と、神奈川県川崎市のLLP(有限責任事業組合)職人倶楽部かわさき(星好代表)を訪ねて、それぞれの活動を聞きました。(栗山正隆)


仕事は地元の業者で

協同組合もりの木ネットワーク

兵庫・加古川

地図

 兵庫県加古川市の協同組合もりの木ネットワークが生まれたのは二〇〇五年です。安村義光理事長が、そのいきさつをのべます。

 「大手ハウスメーカーによる住宅が主流になり、中小業者の仕事が減り、廃業に追い込まれる業者もいます。大手の下請け、孫請け業者は低価格での仕事を強いられ、いつ使い捨てられるか不安な日々を送ってきました。商売がたきだった業者が考えあい、『一人ではできないことも仲間とならできる』ことに気付いたのです」

商売がたきが仲間になって

 いま組合員は工務店、材木店や、設計、ガラス、塗装、造園など三十二業者で、賛助会員が十業者です。

 組合では「永続、人、住、自」を理念にしています。長く続けることが社会貢献となる「永続」、人・職人の育成に努める「人」、健康的な次世代に残す住まいづくりをめざす「住」、自然素材の有効利用と環境保全に努める「自」―を掲げて活動しています。

 兵庫県産木材を使った住宅づくりに力を注いでいます。

 安村理事長は「住宅の大半は『低コスト』ということで輸入材によってつくられているんです。県内の山林面積は七割も占めています。山の手入れをし、木を育て、価格を抑え、安定供給できるようにすれば、県内の家を建てたい人の要望にこたえられると思います」とのべます。

 そして「住宅の『地産地消』促進は森林を守り、CO2(二酸化炭素)の抑制もできます。洪水を防ぎ、海を荒らさないこともできます」と話します。

子どもに木の香り、文化を

 組合員は、森林について学ぶため宍粟(しそう)市山崎町の山にも行きました。組合員の大工が小学校を訪ね、子どもたちに兵庫の木を使い丸太ベンチをつくる指導もしています。組合では子どもたちに木の香り、ぬくもり、職人文化を知ってもらう機会づくりに取り組んでいます。

 安村理事長は「個人として」、県産木材に触れる場として「兵庫の山の木・もく和センター」を開設し、住民に利用してもらっています。木工の初心者指導もしています。

 客と業者が信頼しあうための工夫もしています。

 一般には、客は工務店に発注し、工務店は元締めとして下請けの大工など専門業者に仕事をおろします。客と専門業者の直接のつながりはありません。

 組合は、四月から分離発注方式を始めました。客を補佐するマネジャー(一級建築士)をつけ、客が専門業者と契約します。「客と専門業者が顔のみえる関係がつくれるようになった」と安村理事長はいいます。

 安村理事長は「県へ県内産木材を使う住まいづくり、職人育成などのいっそうの支援を求める活動や、各界との交流などをすすめていきたい。『地域の仕事は地域の業者で』をすすめ、人・物・金の循環型社会を形成し、地域の活性化に貢献したい」と話しています。

職人が共同し住宅づくり

職人倶楽部かわさき代表 星 好(このむ)さんに聞く

神奈川

技術の継承ができなくなる

写真

(写真)職人倶楽部の活動を伝えるリーフレット

 ―職人倶楽部を設立したいきさつは。

  大手のハウスメーカーなどに仕事をとられ、中小零細業者は生き延びるのが困難な状況になっています。このままでは職人の技術継承もできなくなってしまう。二―三年前から、大工・工務店、リフォームにかかわる建築職人が集まって何かできないか考え合いました。

 ―その結果、職人倶楽部づくりに。

  川崎市を中心とするLLP職人倶楽部かわさき(組合員十九人)と横浜市を中心とするLLP職人倶楽部よこはま(同九人)を設立し、ことし三月二十三日に、設立合同祝賀会を催しました。地域に根付いた職人の集団として、共同して家、まち、仕事づくりをするために「環境共生『家づくり宣言』」をつくりあげました。

 ―「宣言」では、木造住宅づくりの意義をのべていますね。

  高温多湿の気候風土にはぐくまれた木造軸組み(在来工法)の優位性を発揮し、職人の良質な技術で住む人の要望を実現する木造住宅をつくることです。国内産、神奈川県内産の木材を使うためには、国内、県内の森林保護・活用に努めることも求められます。このことは、美しい国土の保持、川・海の浄化に役立ちます。森林はCO2の吸収源になり、地球温暖化防止に貢献できます。そのためにも国内産、県内産による木造住宅づくりの大切さを訴えています。

 ―「協同、信頼、技術」で、めざしているものは。

地域の要望に応える集団へ

  建築、改造、リフォームメンテナンスで地域一番になる、高齢者・障害者・弱者が安全に暮らせる福祉共生住宅の建設、家の寿命の長期化に役立ち耐用六十年、百年に努める―ことを掲げています。

 ―悩み、課題もあると思いますが。

  悪質リフォーム業者による事件や建築確認検査など公的責任放棄が背景にある耐震構造偽装もあって、建築業界に対する世間の不信感があります。私たちへの信頼を取り戻すためにも、私たちの日々の研さんが必要だと思います。また、地域の人たちの要望に応える職人集団にならなければと思っています。

 よこはまでは「耐震セミナー&無料相談会」を行い好評でした。かわさきでは、顧客対応の研修など研修・交流をしてきました。十月から講座「知って得する暮らしのお話」を始めます。第一回は十月十四日に「相続について」行います。

 宣伝力が弱いので、インターネット・ホームページ開設などを考えているところです。行政に中小零細業者への支援を求める活動もすすめていかなければと思っています。


 LLP(有限責任事業組合) 共同事業振興を目的に二〇〇五年創設の制度です。経済産業省の説明書によると、出資者は出資額までしか責任を負わない有限責任制、経営者に対する監視機関の設置が強制されないなど内部自治原則、課税はLLPにされず、出資者にする―特徴をあげています。


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