2008年9月29日(月)「しんぶん赤旗」
麻生内閣発足、総選挙の争点
市田書記局長の発言
NHK日曜討論
日本共産党の市田忠義書記局長は二十八日、NHK「日曜討論」に出席し、麻生新内閣、総選挙の争点などについて各党代表と討論しました。他の出席者は、自民党・細田博之、公明党・北側一雄、民主党・鳩山由紀夫、社民党・重野安正、国民新党・亀井久興の各幹事長。司会は影山日出夫解説委員でした。
中山国交相辞任―異常通り越した暴言 重い首相の任命責任
冒頭、暴言を繰り返した中山成彬国交相の辞任が議論になり、与党側は「不適切な発言だ」としながらも、「辞任されるということで一つの区切り」(細田氏)「辞任だが、事実上総理が罷免されたと認識している」(北側氏)などと幕引きを図りました。
市田氏は「今度の問題を含め、自公政権の現状をどうみているか」と問われ、次のように答えました。
市田 一年の間に(首相が)二代続けて政権を投げ出して、中曽根(康弘)さん(元首相)は「二代目(の世襲議員)だから苦労が足りない」とおっしゃいましたが、私は個人の資質の問題というよりも、やっぱり自公政治の行き詰まり、破たんの表れだと(思います)。
(中山氏の発言も)「失言」ではないと思うんです。思っておられることを率直にそのままおっしゃった。ご本人も「大臣としての自覚が足りなかった」とおっしゃったわけで、自覚の足りない人を、組閣に当たって新たに閣僚の座に据えるというのは、やっぱり総理の任命責任はたいへん重いと思います。
(発言は)内容的にも、異常を通り越していますね。「ごね得」発言もそうだし、六十億円もかけて実施した全国いっせい学力テストは、“学力の向上のためじゃなくて、ある団体を暴きだすためにやった”と、そこまでおっしゃった。その団体が気に入らないから“ぶっ壊すためにがんばる”とも、昨日おっしゃっているわけです。これは大臣としても、政治家としても重大な問題です。そういう人を任命した麻生首相の責任も、やっぱり重いと思いますね。
司会が「麻生内閣の支持率が高いうちに一気に解散・総選挙という戦略は狂ったか」と質問したのに対し、北側氏は「安倍内閣、福田内閣は総選挙を経ていない。できるだけ早い時期に信を問うべきだ」と答えました。また、細田氏は「内閣発足時の支持率上昇の幅は過去二代のときより高い。節目できちっと信を問うのは当然」と述べました。
小泉「構造改革」―大企業中心・米いいなりをまっしぐら
小泉純一郎元首相の議員引退にからみ、小泉「構造改革」の“功罪”が議論になりました。細田氏は「『官から民へ』『国から地方へ』の大原則、規制緩和はいまも堅持しているし、これを緩めてはいけない」と強調しました。市田氏は次のように発言しました。
市田 小泉さんがいつ辞められるかは、ご本人の自由ですから、そのことについて、とやかく言うつもりはありません。
ただ、小泉「構造改革」ということで言いますと、“市場にまかせればすべてうまくいく”“いまの痛みに耐えれば明るい明日が見える”ということで、雇用の破壊、派遣労働者が大量に増えた。社会保障費は二〇〇二年度以降、初年度は三千億円カットで、その後毎年二千二百億円カット、(計)一兆六千二百億円もカットされて、暮らしと経済の土台を崩した。また、アメリカ言いなりに憲法を踏みにじって海外に自衛隊を出した。大企業中心、アメリカ言いなりという「二つの政治悪」を、まっしぐらに進んできました。
そういう「構造改革」路線に対して、暮らしを守る、そして平和を守るという立場で、全力をあげてがんばっていきたいと思っています。
景気対策―暮らしと経済の土台しっかり固めることが必要
景気対策に議題が移りました。細田氏は「去年の今ごろは『いざなぎ以来の景気拡大』といっていた。この一年間で原油高騰があり、世界不況、金融ショックも起こった」と述べ、いまの景気後退への自公政権の責任を否定しました。鳩山氏は「世界の責任になすりつけている」と批判しました。
市田氏は次のように述べました。
市田 外国の影響は確かにあると思います。アメリカ経済のいまの大変な事態の影響を日本経済が受けていることは事実ですが、根本問題はやっぱり、日本経済のぜい弱性にあると思います。十年前と比べて大企業・大資産家には(毎年)七兆円の減税をした。
一方で、暮らし、雇用、社会保障が壊され、庶民は小泉内閣以降だけでも十三兆円の負担増です。政府の統計でも「生活が苦しくなった」と答えている人が57・2%で、六年連続で増えています。サラリーマンの給料は九年連続で下がり続けています。
暮らしが大変なところに負担増、増税を押し付け、もうかってもうかってしょうがない輸出大企業には税金を負けてやる。それが家計を犠牲にしてきたわけです。
そういう日本経済のぜい弱性、体質を改善しないで、カンフル剤やばらまきだけでは、私は解決しないと思うんですよ。少々、外国の影響があってもびくともしないような、暮らしと経済の土台をしっかり固めるという経済政策に転換しない限り、小手先のあれこれでは解決しないと思います。
財源―軍事費、大企業優遇の聖域にメスを
景気対策などの財源について、鳩山氏が「天下り、入札、特別会計の無駄遣いなどを見直す」と述べ、与党からは「具体的でない」との声があがりました。市田氏は次のように述べました。
市田 財源は「政治の中身を変える」ということと一体のものだと思います。例えば、アメリカ言いなりの政治をずっと続けようと思えば、軍事費、「思いやり予算」などにメスを入れるということにはならないと思うんです。いま、軍事費はおよそ五兆円ですが、共産党はいっぺんに軍事費をゼロにしろなんてむちゃなことは言いませんが、例えば条約上も義務付けられてもいないのに、在日米軍のために「思いやり予算」と称して、毎年、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意のものなども含めると二千五百億円を出している。社会保障費を毎年二千二百億円削るというのと、ちょうど額は合うわけです。
いったい誰を思いやっているのか。そういうところにメスを入れようと思うと、アメリカ言いなりの政治にやっぱりメスを入れる必要がある。
それから雇用の問題でも、ひとりでに非正規雇用労働者が増えたのではなく、派遣労働についての規制緩和が最初に大がかりにやられたのは一九九九年です。(派遣が)原則自由化された。二〇〇四年には製造業にまで拡大された。そういう、いわば財界の使い勝手のいい労働法制をつくって、「働く貧困層」を大量につくった。これでは国民経済はよくなりません。購買力も増えないわけですから。
先ほど鳩山さんは「できるだけ無駄を省け」と言われましたが、例えば政党助成金は、国民の税金でしょう。これを毎年三百二十億円、わが党以外の党がもらわれるわけです。「官から民へ」などと言いながら、自民党さんの財政の六割は政党助成金です。民主党さんは84%ぐらいですよね。「官から民へ」とか「無駄を省け」と言われるんだったら、まず政党助成金を返上してから言われるべきです。
何よりも、やっぱり負けてやりすぎている大企業・大資産家への税金を、増税しろとは言いませんが、少なくとも十年前の水準に戻すだけでも七兆円入ってくるわけです。そういう「聖域」にメスを入れることが、財源の上では大事だと思います。
後期高齢者医療制度―見直しの財源に「消費税」とは本末転倒
後期高齢者医療制度が話題になりました。細田氏は「野党のように『いまの制度を廃止しろ』というのは大変な提案だ。島根では96%、全国でも75%は保険料が下がった。高齢者は片方では優遇されている」と発言。北側氏も「制度にはさまざまな議論や批判、高齢者の心情もあるので、見直し時期を前倒しして一年間で議論して改善していく。しかし、従来の老人保健制度では安心の高齢者医療を確保できないというのは共通の認識だ」と述べました。また、制度見直しに必要な財源について、北側氏は「消費税の議論につながってくる」と言明しました。
市田氏は次のように述べました。
市田 消費税は「福祉破壊税」と呼ばれるぐらい、収入の少ない人ほど負担が重くのしかかるものです。それを社会保障財源にするというのは、本末転倒も甚だしいと私は思います。
先ほど細田幹事長が「高齢者は優遇されている」とおっしゃいましたが、テレビでご覧になっている高齢者の方がどんな思いを持たれるか。国保料が高すぎて払えないために、滞納になったら国民健康保険証を取り上げられて、病気になってもお医者さんに行けない、それで命をなくしたという人だって、いっぱいいらっしゃるわけです。そういうときに「高齢者は優遇されている」というのは、国民の実感とも違う。
いまの七十五歳以上の高齢者は、ちょうど先の戦争のときには「命を差し出せ」と言われた世代です。ようやく生き延びて、苦労して七十五歳になった。「長い間ご苦労さんでした。せめて医療費はこれからは無料にしますよ」というのが政治の本来のあり方なのに、七十五歳で線を引いて、強制的に別建ての保険制度に入れて、しかも医療内容は制限されて、二年ごとに保険料も見直されて上がっていく。高齢者が増えれば増えるほど保険料を上げようというのが今の方針です。国民はそういう哲学、考え方に怒っているわけです。