2008年9月20日(土)「しんぶん赤旗」

世田谷国公法事件

ビラ弾圧に屈しない

宇治橋さんに不当判決 東京地裁


 厚生労働省職員だった宇治橋眞一さん(60)が休日に職場から離れた場所で「しんぶん赤旗」号外を配り、国家公務員法違反の罪に問われた事件の判決公判が十九日、東京地裁でありました。小池勝雅裁判長は、ビラ配布が「公務員の政治的中立性に抵触する、強い違法性を有する行為」だとして、求刑通り罰金十万円の実刑判決を言い渡しました。宇治橋さんは不当判決として控訴します。


 公判で検察側は、郵便局職員の選挙活動を違法とした猿払事件最高裁判決(一九七四年)に全面的に依拠して、宇治橋さんの行為の違法性を主張していました。

 この日の判決は猿払判決について「有力な学説からも厳しい批判が加えられている」としながらも、「合理性を欠くとはいえず、同種事案の解決の指針として確立している」と論述。「下級裁判所としては同判決を尊重すべき立場」だと述べました。

 その上で、宇治橋さんの行為を「政治的偏向の強い行為」だと指摘。こうした行為が「自由に放任されると、公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政に対する国民の信頼が損なわれる」と、猿払判決の論理をほぼ踏襲して述べました。

 弁護側は公判で「勤務時間外に私服でビラを配っただけ。なんら犯罪行為ではなく、行政の中立性を損なう危険もなかった」と無罪を主張していました。

 この点について判決は「公務の中立性が具体的に害されなかったとしても、(政治的行為を禁じた)国公法の規定を適用することは違憲ではない」と断言。国家公務員の表現の自由が制約されるとしても「間接的、付随的なものに過ぎない」としました。

 この事件では、警視庁公安総務課が捜査の主体になりました。弁護団は「日本共産党を対象とした違法捜査だ」と指摘しましたが、判決は「(本件が)捜査機関の日本共産党に対する差別的な取り扱いに基づくとはいえない」と述べ、公安警察の捜査を追認しました。

“検察の言いなりだ”

 「不当判決に抗議する」「ビラ配布の権利を守れ」―。世田谷国公法弾圧事件で「不当判決」の垂れ幕が掲げられると、東京地裁前に怒りのシュプレヒコールがこだましました。

 毎回のように傍聴に訪れ、裁判を支援してきた元国家公務員の女性は、「ビラ配りが犯罪なんてどう考えてもおかしい。勝つまで応援していきます」と話しました。

 判決後、地裁前で行われた抗議集会では、宇治橋眞一さんが「検察官の言いなりの恥ずかしい判決です。裁判所の良識が問われます。無罪判決を勝ち取るまでがんばります」と力強く訴えました。

 弁護団の小部正治弁護士が「血も涙もない最悪の判決だ」と判決内容を厳しく批判しました。

 参加者の一人、東京都品川区の男性(62)は「判決は政治的なビラまきを委縮させることが狙いです。絶対に負けるわけにいきません。みんなでどんどんビラをまいて、きたるべき総選挙にも勝利し、不当判決をはね返したい」と語りました。


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