2008年9月20日(土)「しんぶん赤旗」

「対テロ戦争」の誤り 米国の地位低下

国際戦略研が「概観」を発表


 【ロンドン=岡崎衆史】英国の有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は十八日、世界の安全保障情勢を分析した「二〇〇八年版戦略概観」を発表し、「対テロ戦争」の誤りで米国の国際的地位が低下し、同盟国も含めた米国離れが進み、世界が多極化しているとの見方を示しました。

 概観は、米国の国際的地位は対テロ戦争開始後の「過去八年にわたって低下した」とし、特に二〇〇三年のイラク戦争後の影響力の失墜は「異常な大きさ」だと強調しました。

 概観は、米ブッシュ政権が9・11同時テロへの対応策として「対テロ戦争」を掲げたことは、「問題の本質と対処の仕方を誤った」と指摘。その結果、米国に集まった同情が、「その行動への嫌悪、発言への不信に置き換わった」と分析しました。

 米国の影響力低下は、(1)北大西洋条約機構(NATO)加盟国が米国が支持するグルジアとウクライナのNATO加盟を拒否し、アフガニスタンでの武力偏重の対応を拒絶していること(2)湾岸、アラブ諸国が経済、安保分野で米国以外の国とも関係を強化しつつあること(3)アジア諸国での米国を含まない「東アジア首脳会議」の存在(4)中南米での米国の影響力の消滅―など、NATO同盟国や伝統的に影響力の強い地域を含む世界で進んでいると述べています。

 IISSのチップマン所長は発表の記者会見で、欧州、中東、アジアなどの各国は、米国に向かって自ら提言していくことが重要だと語りました。


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