2008年9月20日(土)「しんぶん赤旗」

主張

世田谷国公法弾圧事件

国民のビラ配布の権利守ろう


 集合住宅へのビラ配布で、また不当な判決が出されました。東京・世田谷での国家公務員法による弾圧事件です。

公務員ゆえの不当判決

 政党や政治団体の構成員や支持者などが、集合住宅や一戸建て住宅の郵便受けにビラを配ったり、駅頭や街頭でビラを配布したりすることは、日本中で普通に行われている政治活動です。とくに住宅へのビラ配布は、まわりから見て配っている人がどんな職業なのかなどは、全く関係ありません。

 ところが、ふつうの人が配れば何でもないことが一般の国家公務員が配れば犯罪だというのが、今回の国公法事件で厚生労働省職員の宇治橋眞一さんに東京地裁が言い渡した判決の論理です。一般の国家公務員には憲法に認められている表現の自由や政治的権利がないなどということはありません。

 そもそも一般の国家公務員に政治的行為が制限されているのは、「行政の中立性」を守る必要があるからだというのが当局側の説明です。一般の公務員を指揮する首相や各省大臣、副大臣、政務官なども、こと行政にかかわるかぎりは、「行政の中立性」を守らなければなりません。憲法第一五条に、公務員は「全体の奉仕者」とされているとおりです。しかし、彼らは特別公務員として、政治的行為は何ら制限されていません。

 一方で政治家として全面的な政治活動をおこなっていても、「行政の中立性」は守っているし、守れるというのでしょうか。実際に彼らが「行政の中立性」を守っているかどうかは別としても、制度としては指揮をするトップは限りなく政治活動をしても行政にあたっては中立性が守れて、指揮される一般の公務員は時間外に職場とまったく離れた場所で、国家公務員だということを誰にも知られずにビラを配布しても違法だ、犯罪になるというのは、まったく納得できない不思議な理屈だといわなくてはなりません。

 この不思議な理屈は、裁判所の判例としては一九七四年の猿払事件など三事件の最高裁判決で出されたものですが、憲法などの学会ではきびしく批判されているものです。そういうこともあって、その後、この政治的行為の規定(人事院規則)では、ほとんど取り締まりがなされてきませんでした。

 そういう時代錯誤の規定を、〇六年の国公法堀越事件につづいて、また判決でよみがえらせ、正当な言論行為、表現の自由をおさえつける武器にしようというのは、絶対に許されることではありません。政治的行為の規定による国家公務員への刑事罰攻撃は、適用してはならないだけでなく、規定そのものの廃止こそ、いまなされなければならないことです。

言論の自由守るために

 言論の自由にたいする攻撃であるビラ配布裁判では、もうひとつマンションへのビラ配布を住居侵入罪で起訴した東京・葛飾事件もあります。国政を民主的に改革し、政治の中身を変える活動のなかで、言論の自由を守り、拡大することはいよいよ大切になっています。

 日本共産党は、国公法堀越事件の控訴審、葛飾ビラ配布事件の上告審とあわせ、国公法世田谷事件の控訴審での勝利めざして、世論と運動を広げ、国民と力を合わせて、いっそう奮闘する決意です。


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