2008年9月18日(木)「しんぶん赤旗」
宇宙の軍事利用拡大
基本法施行で 概算要求突出
宇宙基本法が施行されて初めてとなる、二〇〇九年度の宇宙関係予算の概算要求で、「安全保障」分野が突出しています。これまで日本の宇宙開発利用は、非軍事分野に限定されてきました。しかし今回、自民・公明・民主の各党が五月に強行した宇宙基本法をたてに、防衛省が「安全保障」名目で公然と宇宙の軍事利用の拡大に乗り出してきたのが特徴です。(中村秀生)
〇九年度の宇宙関係予算の概算要求は、十一府省庁の合計で約四千八十六億円が計上されました。〇八年度予算比で約九百二十六億円増(29%増)です。
分野別内訳(グラフ)をみると、「安全保障」分野が約千二百七十九億円と、31%を占めています。
◇独自の衛星
防衛省は、同法成立をうけて、新規に「総合的な調査研究」として、契約ベースで十一億円(〇九年度は八千五百万円)を計上。衛星を利用する統合防空システムにかんするシミュレーション研究、防衛・宇宙関連技術の調査などにあてます。宇宙政策担当の増員や技術研究本部に「宇宙技術計画室」(仮称)の新設など、組織体制の強化も図ります。
偵察衛星、ミサイル発射探知のための早期警戒衛星、気象・通信など自衛隊独自の軍事衛星の開発・保有・運用について検討が始まるとみられます。
弾道ミサイル防衛(BMD)のうち宇宙関連分野は、地上警戒管制レーダー整備、イージス艦用能力向上型迎撃ミサイルの日米共同開発など、〇八年度予算比で二倍強の約四百二十三億円です。
このほか、商用衛星利用などを含めると、防衛省の総額は約六百二十二億円(〇八年度予算比47%増)です。
◇産業振興も
「安全保障」分野では、防衛省以外に、内閣官房が情報収集衛星関連として約六百五十六億円を計上しています。国民生活分野に分類されている準天頂衛星の開発(約百三十億円)も、軍事利用が想定されます。
一方、宇宙基本法の狙いの一つである「宇宙産業の振興」分野では、文部科学省と経済産業省が計約五十五億円を計上。〇八年度予算比で三・六倍を超える急増ぶりです。
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