2008年9月18日(木)「しんぶん赤旗」

主張

米原潜放射能漏れ

原因もたださずに幕を引くな


 米原子力潜水艦ヒューストンが二年もの間、放射能を含んだ冷却水を垂れ流して日本への寄港をくりかえしていたにもかかわらず、日米両政府が原因を究明せずに幕引きを図ろうとしていることに国民の反発が強まっています。

 放射能を含んだ冷却水を日本の港に垂れ流していたのは、国民の安全をおびやかす重大問題です。アメリカが事故原因を明らかにせず、原子力軍艦の日本寄港をくりかえすなど言語道断です。

 新たに原子力空母ジョージ・ワシントンを横須賀に配備するなど断じて容認できません。中止すべきです。

いくつもの疑問が

 アメリカは、八月二十九日に日本に通報した最終報告で、ヒューストンから漏れた放射能物質が「酸化金属(コバルト)」であり、二〇〇六年六月から〇八年七月まで二年にわたり放射能を漏らしていたことを認めました。しかし、「微量」なので健康に「悪影響を及ぼさない」といい、「更なる情報提供を行う予定はない」とのべています。

 放射能を垂れ流したまま横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、ホワイトビーチ(沖縄県)に寄港したというのに、アメリカは反省も謝罪もしていません。しかも関係自治体が事故原因の徹底究明を求めているのに、新たな情報の提供を拒否しているのは、あまりに日本国民をばかにした態度です。

 アメリカの報告が放射能漏れ事故の原因を究明したとはとうていいえません。バルブから放射能を含んだ水が染み出したといいながら、どのバルブなのかも明らかにしていません。原子炉を直接冷却する一次系のバルブが破損していたのであれば重大です。二〇〇六年四月にアメリカが発表した「米原子力軍艦の安全性に関するファクトシート」では、「一次系からはいかなる計測可能な漏水も発生しない」といっていたはずです。

 バルブから漏水していたのが二年間だという論拠も不明です。事実隠しは許されません。

 米原子力軍艦の寄港地である自治体は、事故原因の徹底解明と再発防止策を強く求めています。

 朝長則男佐世保市長は「疑問があり寄港を容認するかは言い難い」とのべ、長崎県議会も「容易に容認できない」との意見書を政府に送付しました。仲井真弘多沖縄県知事は、「安全が確認されない限り沖縄県への寄港はすべきでない」といっています。松沢成文神奈川県知事も、原潜入港は「原因究明がなされて、再発防止がきちんと取られた上での話」だとのべています。

対米追随の異常なくせ

 日本政府の卑屈な対米姿勢とのかかわりで見過ごせないのは、国際問題研究者の新原昭治氏が入手し公表した米政府解禁文書です。原潜寄港をめぐる一九六三年の日米交渉でアメリカは、冷却水の放出が「必要」という一方で、放射能漏れの危険をあいまいにし、日本が原潜の安全性のデータを求めても「すべて関連データは機密扱い」としてはねつけていました。アメリカいいなり政治の根深さをうきぼりにしています。

 アメリカに堂々とものをいえない政府では国民の安全を守れるはずがありません。政治の中身を変え、自主・独立の平和な日本を切り開いていくことが急務です。



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