2008年9月14日(日)「しんぶん赤旗」
親米派野党 富裕層集中の4県で暴動
中南米諸国は政府支持
ボリビア
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【メキシコ市=島田峰隆】新自由主義と対米従属から脱却する変革を進めている南米ボリビアのモラレス政権に対し、野党勢力が暴力的な抗議行動を広げています。政府は、野党の背後に米国の支援があると批判。中南米諸国はそろって暴力行為を非難し、モラレス政権に連帯を表明しています。
暴力行動が起きているのは、大土地所有者や富裕層が集中する東部四県(パンド、ベニ、サンタクルス、タリハ)。旧政権の新自由主義政策で恩恵を受けてきた四県は「自治」を宣言し、モラレス政権の政策に従わない態度を示してきました。
ボリビア政府は八月に大統領信任投票を実施。モラレス大統領は67%の支持で信任されました。
これに対し今月九日以降、四県の各地で、武装した野党支持者らが政府事務所を襲撃、テレビ局や空港を占拠しています。政府支持者との衝突も起き、十一日にはパンド県で少なくとも八人が死亡。負傷者は百人以上に上っています。政府は十二日夜、パンド県に戒厳令を発令しました。
野党支持勢力はガス・パイプラインを破壊。ブラジルとアルゼンチンへのガス輸送が一時停止しました。
モラレス大統領は「クーデターが始まった」と批判。「民主主義と国の統一を守ろう」と呼びかけています。政府所在地ラパスでは十一日、約五千人が政府を支持してデモ行進しました。
一方、東部四県を代表して大統領宮殿を訪れたタリハ県知事と副大統領が十三日未明、事態収拾に向けた協議に入りました。
一連の事態で注目されているのが米国の関与です。モラレス大統領は十日、米国が暴動を助長し国の分断を画策しているとして、駐ボリビア米国大使に国外退去を命じました。
同大使は八月、「野党との関係は慎重に」というボリビア政府の再三の要請を無視して、野党勢力の急先鋒(せんぽう)で大土地所有者のサンタクルス県知事と会談しました。暴動が激化したのは同会談以降です。
米国務省は十一日、ボリビア政府の主張は「根拠がない」として駐米ボリビア大使を国外追放しました。
これに対し、中南米諸国は足並みをそろえてモラレス政権への支持を表明しています。
ブラジル、アルゼンチン、チリ、ベネズエラは十一日、「ボリビア国民が選挙で選んだ体制を置き換えようとするいかなる試みも認めない」と発表。南米諸国連合(UNASUR)、アンデス共同体、南部共同市場(メルコスル)がモラレス大統領への支持と暴力の拒否を表明しました。ブラジルは、代表団を派遣して事態収拾を支援する予定です。
米がベネズエラ大使追放
【ワシントン=鎌塚由美】米国務省のマコーマック報道官は十二日、ボリビアとベネズエラが米国大使の国外退去を命じたことに対し、ベネズエラへの報復措置として駐米ベネズエラ大使に国外退去処分を通知したことを明らかにしました。ボリビアの暴動に米国が関与しているとのボリビア・ベネズエラ両国大統領の非難については、「根拠がない」と否定しました。
米財務省は同日、ベネズエラのチャベス政権の情報機関の高官と前内務法務相の三人を、資産凍結などの経済制裁の対象に指定したと発表しました。米政府が麻薬テロ組織として指定するコロンビアの反政府武装勢力「コロンビア革命軍(FARC)」をベネズエラ高官三氏が支援していることが理由だとしています。