2008年9月14日(日)「しんぶん赤旗」
盛り上がらぬ総裁選 自民内から嘆き
国民との かい離深まる
「もっと盛り上がっていいのだが」
報道席に空席
自民党本部関係者が思惑はずれの表情です。総選挙を視野に盛り上げをはかる自民党総裁選に思ったように世間の関心が高まらない事態にいら立っているのです。
十三日の大阪、高知から、総裁候補者がそろう地方街頭遊説が始まりました。十二日に日本記者クラブで開かれた公開討論会。NHK総合テレビが生中継しましたが、テレビ画面に映らない報道席は空席が目立ちました。昨年、一昨年の同じ場所での総裁選候補者による公開討論会は、記者席は立すいの余地もなく、立ったまま取材する記者の姿が見られたのとは様変わり。とくに外国メディアの少なさが目を引きました。
福田康夫首相の突然の政権投げ出しを受け、自民党議員は「災い転じて福となす作戦を展開するのみだ」と語っていました。三十八年ぶりの五候補乱立の総裁選をマスメディアを通じて最大限にPRするのは、“災い転じ福”作戦の秘策の一つでした。
マスメディアが取り上げてこその総裁選というのが自民党の身勝手な思惑です。昨年九月の福田首相と麻生太郎幹事長が競った総裁選でマスメディアの対応はどうだったか。告示から新総裁選出大会までの九日間で、総裁選挙管理委員会が把握しただけで十六番組、放送時間にしてざっと八百分、十三時間に達しました。ほとんどが候補者の生出演で、共同記者会見や公開討論会をすべて生中継したNHKの報道ぶりが際立っていました。
ニュース番組の総裁選関連報道やワイドショーを加えると自民党総裁選関連報道の総放送時間は二十時間以上と指摘する関係者もいます。テレビCM料に換算するとPR効果百億円といわれます。
しかし結果は安倍、福田と二代続きで政権放り投げ。マスメディアを巻き込む総裁選作戦が、行き詰まりを深める自民党の浮上にどれほどの効果を上げるか疑問ですが、マスメディアを私物化するかのような自民党総裁選のあり方は、公平・公正であるべき報道をゆがめています。
批判が数百件
一部メディアには批判の声も聞かれます。十二日朝のTBSラジオ報道番組では「一党の党首選挙なのに選挙権もない一般国民向けにマスコミが垂れ流すのはいかがなものか」とのキャスターとゲストの発言がありました。候補者共同会見(十日)や公開討論会を生中継したNHKへは批判の声が数百件以上寄せられました。
日本共産党は八日に、テレビ報道各社に政党の扱いと報道の公正・公平を求め、申し入れています。
笛吹けど踊らず、盛り上がらぬ総裁選は、総選挙の事前運動と位置づける自民党と、その狙いを見抜いている国民との乖離(かいり)状況が深まっている象徴です。