2008年9月12日(金)「しんぶん赤旗」
NHK総裁選報道
異常
まるで“自民放送局”
自民党総裁選が告示された十日のテレビ報道は文字通り「自民党放送局」でした。その報道に対して共産党本部や赤旗編集局に多数の批判の声が寄せられました。
「NHKは自民党の下請けになったのか。各党の意見も紹介しないと、不公平だ」(男性)。「自民党が電波ジャックしている。まったく異常だ」(愛知・男性)などNHKの報道への批判が目立ちました。
この日のNHKを見ると―。午後二時からの「自民党総裁選共同記者会見」を三時のニュース枠にまたがって完全中継。六時のニュースも総裁選。七時のニュースは枠を拡大して五候補のスタジオ生出演五十分間。九時の「ニュースウオッチ9」は五人の人間像や主張の紹介。四十五分間の大特集でした。一政党の党首選を、国民的一大行事であるかのごとく報じました。
東京の古賀牧人さんは「投票権のない国民が、総裁にもなっていない人たちの主張をきいて、どんな意味があるのでしょうか。NHKの不見識をいまさらながら感じます」と述べています。
NHKにも十日は、およそ四百七十の声が寄せられ、多くの意見は「一政党の総裁選に長い時間をかけるのは公平ではない」というものでした。(NHK広報)
「ニュースウオッチ9」の中で麻生太郎氏は「総選挙が勝負なんですよ」ともらしました。総裁選は総選挙の前哨戦にすぎないという認識です。新首相が、早期に解散をすることが既定の事実になっている中、総裁選は総選挙に直結しています。総裁選は自民党の選挙運動にほかなりません。「公共放送を使っての自民党CMそのものだ。ひどすぎる」(東京・男性)という批判は当然です。
放送法は「政治的に公平であること」「意見の対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を定めています。しかし現状は、一政党の主張、政策だけが延々と語られるという異常な状態が続いています。政治の中身を公平に伝えることが今、テレビに求められています。(荻野谷正博)