2008年9月11日(木)「しんぶん赤旗」
行き詰まり自民総裁選 続ける意味はあるのか
本紙は、自民党総裁選開始に先立ち、四回連載で、立候補予定者のこれまでの主張・立場を、「政治姿勢」「構造改革」「消費税」「自衛隊派兵」の各テーマにそくして紹介しました。そこでは、いずれの問題でも大差がなく、行き詰まった自民党政治を転換する意思も能力もないことを指摘してきました。
正式立候補をうけ、十日に行われた共同会見では、大差はおろか、小差すら見いだすことは困難でした。
まず政治姿勢。福田康夫首相の辞任表明からわずか十日しかたっていないにもかかわらず、国民生活をここまで痛めつけてきた自らの政治路線にたいする反省やおわびはどの候補者からもついぞ聞かれませんでした。
それどころか、各候補が繰り返し強調したのが、「自民党は責任政党」というフレーズです。二代にわたり、突然、政権を投げ出すという無責任の極みをやっておきながら、何事もなかったかのように開き直る神経…。
石破茂前防衛相は、「責任をもって国家・国民への政策を示す」のが自民党だとして、後期高齢者医療制度や自衛隊海外派兵の恒久法づくりまで正当化。麻生太郎幹事長が、これまで三代にわたる内閣の下で閣僚や党の要職をつとめ、悪政推進の共同責任を負いながら、自らのセールスポイントに「経験と実績」を挙げるにいたっては、開いた口がふさがりません。
「構造改革」では、「大企業中心で国民そっちのけ」という路線を継続することで全員が一致しました。
とくに小池百合子元防衛相は「国際的な競争にさらされている部分では改革はさけられない。(改革しないと)日本そのものがシャッター街になる」とまでいいました。「構造改革」で商店街を疲弊させ、シャッター街を増やしてきたことへの反省は皆無です。
他の候補からは、「改革にともなう痛み」の現実や、「やさしさ、温かさ」の必要性への言及があったものの、具体策はまったく示されませんでした。
そして、アメリカいいなり政治。この問題では、全員が、米の報復戦争支援のため、自衛隊がインド洋でおこなう給油活動を継続する意義を強調しました。合言葉は、「日本だけが国内事情で撤退していいのか」というものです。
給油活動をめぐっては、どの世論調査を見ても、継続に反対が賛成を大きく上回っています。麻生氏自身、「アフガニスタンについては状況が悪化している」と認めるとおり、約七年間におよぶ戦争は、米軍主導の多国籍軍の空爆による民間人の犠牲拡大、住民の憎しみの増大と報復の激化という悪循環を極限にまで広げました。
いまや、外交的、平和的な方法でしか解決できないことは誰の目にも明らかです。それなのに、各候補は、この期におよんでも、米国いいなりの戦争支援に固執するというのです。
記者会見で唯一、沸いたのは、「他の候補より優れている点は」の質問で、石破氏が「防衛問題のエキスパート」「痛みをずっと見てきた」と述べたのにたいし、与謝野馨経済財政相が「そういうことをいわない謙虚さ」と返した場面でした。
五人もの候補者が立ちながら、この程度の「違い」しか示せない自民党総裁選挙。公共の電波を使いながら、これ以上、選挙をつづけることの意味がいったいどこにあるのでしょう。(小泉大介)