2008年9月9日(火)「しんぶん赤旗」
カナダ 解散・総選挙
親ブッシュ路線ゆきづまる
来月14日実施
カナダのハーパー首相は七日、声明を発表し、十月十四日に下院(定数三〇八議席)選挙をおこなうと発表しました。ロイター通信などが伝えました。
政権与党の保守党は、二〇〇六年総選挙で自由党を破り、十二年ぶりに政権を奪還しましたが、現有百二十七議席の少数与党。各種世論調査では現在、保守党の支持率が野党側をリードしています。
ハーパー首相は、米国の景気減速に悪影響を受けているカナダ経済を立て直すために、しっかりした指導者が必要だと解散・総選挙に打って出た理由を説明。野党側は、温室効果ガス排出削減のための炭素税の導入など、気候変動問題を争点に押し出しています。
解説
温暖化・アフガン・経済で苦境
「もし国境の南方(米国)で変化の風が吹けば、おそらくカナダにも波及効果が及ぶだろう」。カナダ日刊紙最大手トロント・スターは社説で、ハーパー首相が総選挙に打って出た背景をこう指摘しました。
隣の米国の大統領選で民主党のオバマ上院議員が当選するような政治状況の変化が起これば、親ブッシュ路線で知られたハーパー政権も、苦境に立たされる。それならば、まだ自身の支持率が急落しないうちに総選挙を―とのシナリオです。ロイター通信も、同様の識者の見立てを伝えています。
ハーパー保守党政権の親ブッシュ路線は、少数与党としての政権運営にも影を落としていました。とくに気候変動問題で、京都議定書の旗振りをしていた自由党前政権の姿勢を転換し、議定書に背を向けるブッシュ米政権に同調。昨年十二月にインドネシア・バリ島で開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議でも、温室効果ガス排出削減の数値目標設定に、米国に追随して反対しました。
野党第一党の自由党は、排出削減のための炭素税の導入など「グリーン・シフト」を掲げ、ハーパー政権と対立。議会運営がぎくしゃくする要因となりました。
アフガニスタン問題でも、北大西洋条約機構(NATO)軍としての派兵は自由党前政権の決定ですが、ハーパー政権は派兵期限を二〇一一年まで二年間延長。延長反対にかじを切った野党側と対立し、今年二月には解散の一歩手前まで政局が流動化しました。
内政では、ハーパー政権は、減税政策を中心とする企業競争力、自由貿易を重視。一方、自由党など野党側は、失業の増加など同政権の経済政策を強く批判しています。
野党自由党のディオン党首は「(ハーパー首相は)カナダの歴史の中でも最も右翼的な首相だ。ブッシュ政権の三期目をカナダで行おうとしている」と批判を強めています。(小林俊哉)