2008年9月4日(木)「しんぶん赤旗」
「政治の中身の変革」を訴え、総選挙勝利にむけた総決起を
全国都道府県委員長会議 志位委員長の報告
三日、日本共産党本部で開かれた全国都道府県委員長会議での志位和夫委員長の報告を紹介します。
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みなさん、おはようございます。常任幹部会を代表して、この会議への報告をおこないます。
九月一日、夜九時半、福田康夫首相が突然の辞任表明をおこないました。政治情勢は、早期に解散・総選挙がおこなわれる可能性がいよいよ濃厚になる新たな緊張した局面に入りました。この情勢の展開をどうとらえ、どう党としてのぞむかについて、報告します。
政治的な解体状況にある自公政権――「政治の中身の変革」を訴えよう
福田首相の辞任表明は、一昨日のわが党の記者会見でのべたように、きわめて無責任な政権の投げ出しであることを、きびしく批判しなければなりません。首相の辞任会見を聞いていても、最後まで他人事のような態度を続け、国政の責任者としての自覚があまりにもないのは、驚くばかりでした。
同時に、問題は、首相個人の問題にとどまりません。昨年の安倍晋三首相に続いて、福田首相と、二人続けて臨時国会の冒頭あるいは直前に政権を投げ出すという事態が起こったことは、自公政権のすすめてきた政治の中身がいよいよ行き詰まった、自公政権が政治的な解体状況にあるということを象徴するものにほかなりません。
いま、わが党が国民に大いに訴えていく必要があるのは、今回の事態の根源に自公政権の政治の中身の破たんがあり、この古い、破たんした政治の中身を大本から変革する党――日本共産党をのばしてこそ、日本の未来は開けるということであります。
第一に、「構造改革」の名で、一部の大企業の儲(もう)けだけを応援し、庶民の生活を痛め続ける政治がいよいよ行き詰まり、立ち往生しています。雇用の問題でも、社会保障の問題でも、投機マネーの問題でも、マクロ経済政策にかかわっても、国民生活・家計を犠牲にして、一部の大企業の儲けだけを応援する政治が、国民生活と日本経済を深刻な危機に陥れています。福田政権は、小泉・安倍政権が進めた「構造改革」路線を加速するわけにもいかず、かといって見直すわけにもいかず、経済政策でまさしく進退窮まれりという状態に陥りました。そうした政策的破たんのなかでの政権投げ出しであります。こうしたもとで、日本共産党が一貫して主張してきたように、大企業から家計へと経済政策の軸足を移す、大きな転換が求められていることを、大いに訴えていく必要があります。
第二に、アメリカいいなりに、憲法を踏みにじり、自衛隊を海外に派兵する政治が行き詰まり、立ち往生しています。とくに、福田内閣は、アフガニスタンで米軍などが進めている報復戦争への海上自衛隊の支援の問題について、アメリカからの強い圧力もあり、つぎの臨時国会で何としてもテロ特措法を延長するという対応でのぞみましたが、そのことが国民との矛盾を広げ、戦争とテロ拡大の悪循環によってかつてない治安悪化にみまわれているアフガンの実態との矛盾も広がるなかで、与党内でも矛盾と分岐がおこり、それでも海外派兵継続に固執しようとしたことが、政権投げ出しという結末に至る大きな一要因となりました。ここでも政治の中身の大きな転換が求められています。
このように福田首相の辞任の根本には、異常な財界中心、アメリカいいなりという、二つの政治悪を特徴とする自民党政治が、いよいよ行き詰まり、大きな破たんに陥っているという大問題が横たわっています。これは六中総決定が強調した「情勢と綱領が響きあう」という状況の一つのあらわれにほかなりません。この激動的局面にあたって、ここをよくつかんで、財界・アメリカ中心から国民中心に、「政治の中身の変革」をはかることこそ、いま大切であり、それを担える政党は日本共産党をおいてほかにはないということを、広い国民のなかに大いに訴えていこうではありませんか。
国政の基本問題について国会で徹底議論をしたうえで、国民の審判を仰げ
いま一つ報告しておきたいのは、今後の政治局面にたいする党としての対応方針についてであります。
わが党は、一昨日の記者会見で、自民党の新総裁、新首相にだれがなろうと、解散・総選挙で国民の審判を仰ぐことは当然だし、避けられないと強調しました。自民党と公明党は、衆議院で三分の二を超える絶対多数を持っていますが、これは小泉純一郎首相の時代の郵政選挙で国民を欺いて得た議席であります。その後の安倍内閣、福田内閣、二代の内閣は、国民の審判を受けていません。そのことが、それぞれの惨めな結末にもつながりました。それにつづく首相がだれになったとしても、国民の審判をへないでつくられた三人目の首相となるわけで、もはや国民の審判抜きにズルズルと居座ることは、とうてい許されるものではありません。またできるものでもありません。解散・総選挙によって国民の審判を仰ぐことを、わが党は要求していくものであります。
ただし、そのさい、臨時国会で、国政の基本問題について、国民の前での徹底した議論をおこない、争点をはっきりさせたうえで審判を受けるのが筋であり、道理というものであります。
いま国政では、物価高騰問題、後期高齢者医療制度をはじめとする社会保障の問題、若者を「使い捨て」にする派遣労働の問題、イラクやアフガンへの自衛隊派兵の問題など、国民が切実に解決を願っている課題が山積しています。だれが新首相になったとしても、まず国会という公式の場で、これらの問題について自らの所信を明らかにし、国政の基本問題での立場を明らかにすることは、国民への当然の責任であります。
わが党は、外交、内政の基本問題について、国会という舞台で、国民の前で徹底的に議論をおこない、争点を明らかにしたうえで審判を仰げということを、臨時国会において強く要求していくものであります。
早期の解散・総選挙の可能性がきわめて濃厚となった
わが党として、そうした政治的要求をするわけですが、同時に、わが党としての情勢判断の問題があります。すなわち、解散・総選挙の時期をどう判断するかという問題があります。
私たちは八月初めの常任幹部会の会議で、福田内閣の改造をうけて、「年内もしくは来年初頭の解散の可能性が生まれた」という情勢判断をおこない、それにふさわしい活動をおこなおうということを提起しました。この情勢判断は、八月初めの「しんぶん赤旗」別刷り「主張」でも、明確にのべました。
現局面では、福田首相の政権投げ出しという事態をうけて、「年内もしくは来年初頭の解散の可能性」は、現実的にきわめて濃厚になったという判断をすべきであります。だれが新首相に選出されるにせよ、国民の審判を受けていない首相、しかも審判を受けていない三人目の首相というのは、きわめて不安定で脆弱(ぜいじゃく)な政治的基盤しかもちえません。解散・総選挙の時期がいつになるかは、政治的な展開しだいであり、予断をもって言えませんが、九月の下旬に召集されるであろう臨時国会が始まったら、いつでも解散・総選挙になりうる状況をはらんだ情勢の展開になる――こうした判断をもって、今後の政治局面に対応する必要があります。
新首相が、臨時国会で、本格的な議論ぬきにいわゆる冒頭解散をおこなうというのは、これは道理がないものですが、政治的展開いかんでその可能性を排除するわけにはいきません。政府・与党が、第一次補正予算案を成立させたうえで、十月から十一月に解散し、十一月から十二月に総選挙という可能性もあります。政府・与党が、たとえば第二次補正予算案の編成までおこなうなどの場合には、来年の年頭解散ということもありうることです。そうしたいろいろな幅、可能性を見ておく必要があります。
臨時国会が始まったら、いつでも解散の可能性がある。そういう認識をもって、いついかなるときの解散にもそなえる態勢で政局にのぞむ必要があることを、強調しておきたいと思います。
新しい政治局面のもとでの総選挙勝利にむけた方針について
新しい政治局面のもとでの、わが党の総選挙勝利にむけた党活動の方針についていえば、その基本点は六中総決定の全面実践にあるということを、あらためて強調しておきたいと思います。そのうえで、情勢の新しい展開にそくして、四点ほどの強調点を報告します。
全有権者を対象とした宣伝・組織活動を前面にすえる
第一は、選挙戦勝利のための独自の諸課題――全有権者を対象とした大量政治宣伝、対話と支持拡大、後援会活動などの前進・飛躍の大波をつくっていくことを、党活動全体の前面にすえる必要があるということです。
八月初めの常任幹部会では、早期の解散の可能性が生まれてきたもとで、これらの活動の自覚化・意識化が必要だということを強調し、全党にそのことを訴え、自覚的とりくみが強まってきています。しかしそれは、まだ一部にとどまり、自然成長にとどまっている党組織も少なくありません。
早期の解散の可能性がきわめて濃厚になってきた新しい局面にさいして、大量政治宣伝と対話・支持拡大など、全有権者を対象とした活動を、抜本的に重視し、強化しなければなりません。
とくに新しい党押し出しポスター「貧困なくし、平和な日本へ 政治の中身を変える」を一気にはりだしましょう。遅くとも九月中には、目抜き通りから路地裏までよく目立つところに、一枚残らずはりきることを訴えるものです。そのさい政策ポスターなどとくみあわせてはることも、大いに追求します。ポスターのはりだしで党の元気な姿、党の勢いを日本列島のすみずみで示すために力をそそぎたいと思います。
全有権者規模での目に見え、耳に聞こえる活動を大いに重視しながら、対話・支持拡大など組織活動を飛躍させていく。三百五十万人をこえた後援会員をさらに増やし、ともにたたかう。これらを党活動の前面にすえて奮闘することをよびかけるものです。
「大運動」の発展・飛躍、全自治体・行政区での演説会・集いの成功を
第二に、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」、多種多様の「集い」を、ひきつづき支部を基礎とした選挙活動全体の「軸」にすえて、いままでの規模を大きく発展、飛躍させるとりくみが、きわめて重要であります。
六中総後、「集い」、演説会・シンポジウムの開催数は三千百回増え、参加者数は九万二千人増えました。累計で、「集い」にとりくんだ支部は57・4%、開催数は約二万三千回、参加者数は四十一万一千人となりました。演説会・シンポジウムの開催数は一千回、参加者は二十六万六千人であります。合計で六十七万七千人にまで広がりました。
この規模を一段と発展させ、またすべての支部のとりくみに発展させ、大きなうねりをつくりあげる。そして、一日も早く百万をこえる運動に発展させることをよびかけるものです。そのさい、党創立八十六周年記念講演のダイジェストビデオを、思い切って活用することを訴えたいと思います。
この流れのなかに、全自治体・行政区での演説会・集いを位置づけることが重要です。六中総では、秋の時期に、全自治体・行政区で演説会・集いを開くことをよびかけ、全国で積極的な計画がたてられています。さらに情勢の進展を考え、都市部などで広い有権者を対象に街頭演説も計画されつつあります。この第二次遊説計画を大成功させたいと思います。とくにすべての自治体・行政区での演説会・集いという、これまでやったことのないとりくみに挑戦し、必ず成功させたいと思います。
なお演説会・集いの開催時期は、早期の解散の可能性が濃厚になったという新しい情勢の進展をふまえて、変更が可能なところでは見直すようにします。これから時期を新たに設定するところでは、情勢の新しい進展をふまえて、開催の時期を決めてほしいと思います。こうした調整をおこないたい。個々の調整については、中央と地方でよく相談しながら進めていきたいと思います。
党勢拡大を前進から飛躍に――大きな高揚のなかで総選挙をたたかおう
第三は、党勢拡大を前進から飛躍に転じることであります。
党員拡大は、入党審査・承認をきちんとやりきれば、八月もふくめて十カ月連続前進となり、五中総後の新規入党者は一万六百人を超えました。読者拡大も、全党の奮闘によって、八月も、日刊紙、日曜版ともに全党的に前進し、五月から四カ月連続で、日刊紙、日曜版とも前進をつづけています。
八月のとりくみでは、全国が奮闘しましたが、なかでも全国十一の大県がそろって日刊紙、日曜版とも前進したことは、重要であります。とくに、七月に読者拡大で残念な後退を喫した東京、大阪、京都が、都・府の指導部みずからが自己分析を深め、総選挙の得票目標、議席目標達成を正面にすえて奮闘する点での弱点をほりさげ、それを力に猛奮闘し、八月の増勢の一位、二位、三位をしめ、その合計数が全党の前進の四割近くをしめるなど、全党のけん引力の役割を発揮した経験は重要であり、大いにその教訓に学ぶ必要があります。
「党の実力が足りない」というのは、これまでの数回の国政選挙での最大の反省点でありました。この間つくりだしてきた前進の流れに確信をもって、党勢拡大を、前進から飛躍に転ずるためのあらゆる努力をそそぎたい。党員拡大でも、読者拡大でも、その規模を、二倍三倍に引きあげていくことを自覚的に追求し、党勢の大きな高揚で総選挙をたたかうということを、最後まで握ってはなさずに奮闘しようではありませんか。
持てる力の総発揮へ――支部を基礎にした臨戦態勢をつくりあげよう
第四に、私たちは、先の参議院選挙の教訓として、持てる力の発揮という点でも弱点があったということを総括しました。いよいよ総選挙という局面にさいして、「支部が主役」で、わが党が持てる力を、底の底まで総発揮するたたかいにしていく臨戦態勢をつくりあげていく必要があります。
六中総決定のすみやかな全党員、全支部への徹底を急ぐこと、支部を基礎に臨戦態勢を全党につくりあげていくこと、すなわち支部会議の定期開催、すべての党員への連絡・連帯網をつくりあげていくこと、たまり場をつくっていくことなどが、急がれます。
そのさい、この間むかえた一万人をこえる新入党員への学習の援助、活動参加への援助をおこなうことも強調しておきたいと思います。
こうして、支部を基礎にした臨戦態勢をつくりあげ、もちろん党機関も激動・緊迫の情勢にふさわしい臨戦態勢をとるようにしたい。日々、支部を基礎にした決起を広げ、いざ解散・総選挙となったら、文字どおり党の持てる力が総発揮できる態勢をつくりあげていこうではありませんか。
第25回党大会の招集の延期について
つぎに第二十五回党大会の招集の問題について報告します。現在の情勢を全体として判断するならば、来年一月に党大会を招集する条件はなくなったことは明らかであります。したがって、党大会については、常任幹部会としては、党規約にもとづいて大会延期の手続きをとりたいと考えています。
しかるべき時期に開催する七中総で、党大会の延期の手続きをとることにしたいと思います。大会延期を決めるのは中央委員会総会の責任と権限に属する問題ですが、常任幹部会としては、大会延期の手続きを提案するという判断をしていることを、報告しておきたいと思います。
党の前進・躍進の大きなチャンス――勝利に結びつける攻勢的たたかいを
以上、新しい政治局面のもとで、早期の解散・総選挙の可能性がきわめて濃厚になったこと、そのもとでのたたかいの方針についてのべました。総選挙勝利にむけた方針の基本は、六中総決定の全面実践でありますが、この報告も方針の補強に役立ててほしいと思います。
最後に私が訴えたいのは、いよいよ早期の解散・総選挙への流れが強まるもとで、わが党が、きたるべき総選挙を、党の前進・躍進の大きな好機――チャンスとしてとらえ、奮い立ってこの好機を現実の勝利に結びつける攻勢的なたたかいを、勇躍して展開することであります。
過去数回の国政選挙で、「二大政党づくり」の動きとのかかわりで、わが党は、残念な後退、あるいは現状維持のたたかいを強いられました。しかし、たたかいのたびにわが党は教訓を引き出し、つぎのたたかいをより良くたたかうため知恵と力をつくしてきました。
とくに、この一年間をふりかえってみますと、五中総決定と、それにもとづく全党の努力によって、わが党は今後の奮闘いかんでは、総選挙での前進・躍進をかちとりうる条件を、客観的にも、主体的にもつくりだしつつあります。全党の奮闘によって、良い態勢をつくって、激動・緊迫の情勢に、私たちはいまのぞもうとしています。
客観的には、六中総決定で詳しく解明した「情勢と綱領の響きあい」という状況を、全党のたたかいで切り開いてきました。主体的にも、「大運動」という党綱領を日常的に語る党史上かつてないとりくみに挑戦し、これまでにない幅広い人々の参加をえて、大きな前進をつくりだしつつあります。党勢拡大でも、全党の奮闘によって、党員拡大でも、読者拡大でも、上げ潮の流れをつくりだしつつあります。もちろん、その到達点は、総選挙の勝利を保証するものとはなっておらず、勝敗は今後のたたかいにかかっています。同時に、全党の奮闘いかんでは前進・躍進をかちとる条件をつくりあげてきた。このことに、深い確信をもって、今後の激動的な政治局面に意気高く、攻勢的に立ち向かっていくという姿勢が何よりも大切であります。
全党が、目前に迫ってきた総選挙にむけて勇躍して立ち上がり、六百五十万以上という得票目標を、都道府県、地区、支部にいたるまで自らの自覚的目標として、その達成のために全力をあげ、党の前進・躍進の可能性、そのチャンスを、現実の勝利という結果に結びつけるために大奮闘することを訴えて、報告を終わります。