2008年9月4日(木)「しんぶん赤旗」

主張

軍事費概算要求

危険な米戦争政策との一体化


 防衛省は八月二十九日、総額四兆八千四百四十九億円で今年度当初予算に比べ2・2%増、千二十三億円も上回る二〇〇九年度概算要求を提出しました。概算要求の別枠とされる米軍再編経費などを加えると軍事費総額はさらにふくれあがります。

 福田康夫首相の突然の辞意表明で今後の予算編成作業は不透明ですが、在日米軍を再編・強化して自衛隊の海外での作戦能力を強め、生活関連予算を圧迫する軍事費の拡大に警戒が必要です。

海外での作戦に備えて

 概算要求は、「日米同盟関係」を「将来の課題に対応するため、より深く、より幅広く、発展していく必要がある」と明記した二〇〇六年五月の米軍再編に関する日米合意を実施するのが眼目です。この約束に従って政府は、アメリカが世界各地で引き起こす戦争に参加・協力できる能力を自衛隊に持たせようとしているのです。

 陸上自衛隊のCH47輸送へリに防弾板をとりつけ、「多様な環境下での活動を可能にするため」としてエンジンの能力を向上させるのは、激しい戦闘状況にあるアフガニスタン本土への出動と作戦行動を想定してのことです。泥沼化しているアフガニスタン本土に自衛隊を派兵するようアメリカが圧力を強め、日本政府も調査団を送った経過があります。いつでも出動できる態勢をつくるのが狙いなのは明らかです。

 偵察用小型無人機の導入も重大です。低空で地上部隊の動きを把握し、攻撃地点を味方に知らせ攻撃につなげるという小型無人機が攻撃作戦と不可分なのは、アフガニスタン戦争でも明らかです。米軍再編中間報告(〇五年)は無人機による偵察活動を日米協力の事例にあげており、海外での無人機を使った日米共同作戦につなげる狙いが透けてみえます。

 最新型のクラスター爆弾調達のため七十三億円を計上したのも見過ごせません。最新型であっても非人道兵器に変わりありません。クラスター爆弾禁止条約に賛成し、十二月の調印を前にしながら、現有の爆弾を処分するかわりに最新型爆弾を調達するというのは、禁止条約にこめられたクラスター爆弾禁止の願いにも反します。

 重大なのは、沖縄海兵隊のグアム移転を口実にアメリカが米領グアムにつくる米軍基地の建設費を概算要求に初めて計上したことです。基地司令部や隊舎などの施設と学校など生活関連施設に直接財政を支出、家族住宅建設は民間への出資、基地内道路などのインフラ整備には融資という形で、最終的には合計約六十一億ドル(約七千億円)を日本が負担します。

 他国領内の基地建設費を日本が負担するなど主権国家ではありえないことです。政府は、グアム基地建設に協力し、アメリカの先制攻撃戦争を加速するような異常な態度を改めるべきです。

大幅削減することこそ

 「日本防衛」の建前を後景に押しやり、海外で戦争する態勢づくりを進めれば、世界、とりわけアジア諸国とのあつれきを強めるだけです。紛争を戦争ではなく平和的外交的に解決するという平和の流れに合流することこそ、戦争を放棄した日本が進むべき道です。

 米いいなりの軍事力至上主義を改め、軍事費の大幅削減に踏み出すことが根本的に重要です。



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