2008年8月29日(金)「しんぶん赤旗」
待機児童 1万9550人
5年ぶり増 都市部に集中
保育所
厚労省調査
保育所に満員などの理由で入れない待機児童が、二○○八年四月一日時点で一万九千五百五十人と、○七年より千六百二十四人増えたことが二十八日、厚生労働省の調査で分かりました。増加に転じたのは五年ぶり。同省は「女性の社会進出などを背景に需要が増加しているが、保育所の整備が追い付いていない」としています。
調査結果によると、保育所数は○七年に比べ六十一カ所増え、二万二千九百九カ所。定員は二百十二万八百八十九人で、利用児童の二百二万二千百七十三人を上回りました。しかし、地方では定員に余裕がある一方、都市部に待機児童全体の77・7%が集中。大規模マンションの建設などで需要が急激に増える地区もあり、待機児童の増加につながったとみられます。
待機児童が五十人以上いる「特定市区町村」は、○七年より十カ所増えて八十四市区町村。待機児童が最も多いのは仙台市の七百四十人で、次いで横浜市の七百七人、大阪市六百九十六人の順でした。
一方、富山、石川、福井、山梨、長野、鳥取、香川、佐賀、宮崎の九県は待機児童がゼロでした。
解説
従来の「対策」の限界示す
小泉内閣の「待機児童ゼロ作戦」(二〇〇二―〇四年度)をはじめ、政府はこの間、鳴り物入りで“待機児解消”に取り組んできました。しかし、その内実は、定員以上の詰め込みと、常勤保育士に代わるパート保育士の導入促進というもので、保育所の新増設は脇に置かれています。
厚生労働省は〇一年度から、一時的に認可外保育所を利用している子どもを集計から除外し、待機児童数を少なく見せることまでしてきました。それでも今回五年ぶりに増加に転じたことは、これまでのやり方に限界があることを示しています。待機児童が集中する地域を中心に、子どもが楽しく安全に過ごせ、親も安心して預けられる保育所を、計画的に整備することが求められています。
福田内閣は「新待機児ゼロ作戦」として、今後十年間で保育サービスの利用者数を百万人増やすことなどを掲げています。しかし、保育所の新増設の位置付けはあいまいで、保育の民営化を進める「認定こども園」の拡充などに重点が置かれています。
保育への企業参入を促進するため、保育所の施設設備基準の引き下げや、保育の公的責任を後退させる直接入所契約制度の導入なども検討されています。「待機児解消」の名の下に、保育制度の改悪を進めることは許されません。(坂井希)