2008年8月27日(水)「しんぶん赤旗」

農水相の事務所費疑惑

問われる首相の任命責任


 「特に閣僚については政治資金の透明性を確保するという責任が格段に大きく、よりいっそう厳格な管理と説明責任が求められている」

 これは、福田康夫首相が昨年十月五日の参院本会議で答弁した内容です。一昨年の安倍前内閣の佐田玄一郎行革担当相以来相次いでいる事務所費疑惑を受けての答弁でした。

真っ向から背く

 ところが、福田首相がはじめて“自前”で組織した閣僚に、またもや事務所費疑惑が発生しました。太田誠一農水相が自分の政治団体の事務所を当時の政策秘書宅に置き、家賃も払わず、専属の職員も置いていないのに、巨額の事務所費を計上していたのです。

 政治資金は、金の出入りについて透明性を高め、国民の監視と批判の中で、政治家の倫理をただすというのが基本です。事務所としての実態のないところに、巨額の事務所費を計上し、不透明な資金をねん出するという事務所費問題は、これに真っ向から背くものです。

 福田首相の言明からいっても、太田農水相は政治資金の透明性確保で「格段の責任」が求められる閣僚として失格といわざるをえません。同時に、首相の任命責任も重大です。

 ところが町村信孝官房長官は「秘書の自宅を事務所として届け出ていたからといって、事務所の経費が全部不正であるとは言い切れない」(二十六日)とかばいました。太田農水相自身も「次善の策として秘書の自宅を届け出た」「問題はまったくない」などと開き直るばかりです。

解決姿勢の欠如

 そこには、政治とカネの問題での福田首相自身の姿勢が反映しているといわなければなりません。就任当初こそ、安倍前内閣で相次いだ閣僚の事務所費疑惑を受けて、「まず閣僚から襟を正す」などと述べていました。しかし、自衛隊の海外派兵推進や貧困と格差を招いた「構造改革」の継続には固執する一方、政治とカネの問題には次第に触れなくなりました。今年一月の施政方針演説では政治とカネの問題については一言しかなく、今月一日、初の内閣改造後の記者会見ではまったく無視しました。

 国民が批判すれば不承不承、「襟を正す」というけれども、みずから抜本的に問題解決をはかろうとする姿勢が欠如しているからです。その根底には、企業団体献金と政党助成金に依存する政治資金での無節操ぶりがあります。

 首相がこうした姿勢だからこそ、事務所費疑惑を抱える政治家を平気で閣僚に任命するのです。その意味でまさに、首相の責任が問われます。(藤田健)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp