2008年8月27日(水)「しんぶん赤旗」

主張

経済対策

壊れたカジにしがみついても


 「経済対策」をめぐる政府・与党の議論が混迷を深めています。

 二十五日の経済財政諮問会議で日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)らは、「構造改革を基本に据える」ことを強調しました。社会保障の自然増を毎年二千二百億円削減する「骨太方針2006」を堅持し、安定財源の確保を名目に消費税増税に道筋をつけることも求めています。

 与党側からは従来型の公共事業や減税を含む「大型」補正予算の要求が噴き出しています。

やっぱり「外需頼み」

 経済対策の責任者の与謝野馨・経済財政相は、「日本経済自体の体質はしっかりしている」「内在的なマイナス要因はない」とのべています(七日の記者会見)。

 海外需要が振るわず、内需の大半を占める家計消費も減少し、四―六月の経済成長はマイナスに転じました。外需の“大黒柱”のアメリカ経済は底入れの見通しさえ立っていません。景気回復のためにも、経済の健全な発展のためにも、「外需頼み」を改めて内需の回復を図ることが不可欠です。

 内需の要をなす家計は、政府が戦後最長だと胸を張ってきた「景気回復」のすべての期間を通じて、低迷を続けてきました。いつまでも家計が回復しないことこそ日本経済の最も深刻な「体質」問題であり、ここに最大の「内在的なマイナス要因」があります。

 与謝野氏は、景気回復は「アメリカはじめ諸外国の経済状況に依拠している」とのべています。展望のない「外需頼み」を続けるしかない福田内閣は、暮らしと経済の回復の道筋をまったく描けない泥沼に落ち込んでいます。

 内需が大事だと説く麻生太郎・自民党幹事長は、証券優遇税制を拡充して三百万円までの配当を非課税にすることや、大企業向けの設備投資減税を求めています。

 三百万円の配当とは、一株に百十円を配当しているキヤノンなら約二万七千株分に当たります。キヤノンの株価は五千円程度であり、一億三千五百万円の投資に相当します。庶民の暮らしとはケタが違う世界の話です。自民党幹事長の眼中には大企業や大資産家しか存在しないようです。

 定率減税廃止で三兆円増税の先頭に立った公明党が今度は「定額減税」を提案しています。定率減税廃止の理由は基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げることだったのに、いま政府は国庫負担引き上げには消費税増税が必要と言っています。許せない「だまし討ち」です。

 財政のしわよせをすべて消費税増税で庶民にかぶせる自公政治・「構造改革」路線のもとでは、「定額減税」を実施しても後が怖くてとても消費には回せません。

軸足を暮らしと家計に

 経済対策の議論は、政府・与党には大企業・大資産家の応援や選挙目当ての下心はあっても、国民の暮らしに寄り添う姿勢はかけらもないことを鮮明にしています。矛盾が噴出している「構造改革」にしがみついて右往左往する福田内閣と自公は、壊れたカジを握って漂流する泥舟です。

 燃油高騰への直接補てんなど生活と営業を守る緊急対策や投機の規制と同時に、家計を犠牲にして大企業・大資産家に奉仕する「構造改革」路線を根本から転換し、暮らしと家計に経済政策の軸足を移すことが強く求められます。


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