2008年8月26日(火)「しんぶん赤旗」
主張
北京五輪閉幕
スポーツ精神に前進を見た
選手が躍動し、興奮と感動に沸き上がった北京オリンピックが幕を閉じました。
熱戦の余韻が残る
熱戦の余韻がいまも残るのは女子ソフトボールです。上野由岐子投手の熱投とチームの結束力が悲願を達成しました。快挙には「仲間を信じてあきらめない」(上野投手)強さがありました。
衝撃的だったのが陸上競技でのウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)の快走です。百メートル9秒69、二百メートル19秒30、驚異の世界記録を飛ぶように躍るように走り、人間の能力に新たな扉を開きました。
競泳ではマイケル・フェルプス選手(アメリカ)が一大会最多となる八個の金メダルを獲得(うち七つが世界新記録)しました。勝負強さを発揮したのが日本の北島康介選手です。二大会連続で平泳ぎ百メートル、二百メートルを制し、「努力は結果を裏切らない」と語りました。
全力を尽くした競技者たちの表情は輝いており、「ライバルがいたからこそいまの自分がある」との言葉が晴れやかでした。ドーピング(禁止薬物使用)とたたかいながら、記録と技術の進歩にひたむきに挑むスポーツ精神が前進を見せた五輪といえるでしょう。
世界の競技水準の向上はメダル獲得の分布にもあらわれました。獲得国は前回のアテネ大会より十三も増えて八十七カ国・地域に拡大、参加国の43%を占めました。なかでも主催国・中国とともに、ベラルーシやカザフスタン、ケニア、ブラジル、ジャマイカなどが躍進、その広がりは大きな流れとなってきています。
一方、アテネ大会で史上最多の三十七個のメダルを獲得した日本は二十五個と減らし、全体の順位も六番目から十一番目に後退しました。女子レスリングが連続して全階級でメダルを獲得、男子トラック種目で初の三位入賞を果たした四百メートルリレーなど健闘もありましたが、全体として不振でした。
マラソンでも男女三選手が故障で欠場・途中棄権、調整に課題を残しました。柔道では有力選手が一回戦で敗退、世界からの立ち遅れが歴然となりました。男子の野球、サッカー、バレーボールは過信もあり、選手強化とチームづくりに失敗したといえるでしょう。
浮き彫りになった競技力向上の課題にどう向きあい、どう立て直していくか、日本のスポーツ界に問われています。その際、選手の立場に立ち、世界の競技水準や動向にかみ合った長期的な強化策を練りあげてほしいものです。科学的なトレーニングを軽視して根拠のない精神論をあおる傾向を戒めとすることも、今回の反省点ではないでしょうか。
パラリンピック成功を
北京オリンピックの十七日間が平和のうちに終了したことはなによりでした。開催をめぐって民族紛争やテロの脅威に緊張し、大気汚染や食料問題などを抱えながらも、主催者の努力と平和を願う国際世論に支えられました。アジアで三回目のオリンピックが政治体制を超えてりっぱに運営されたことを喜びたいと思います。
北京ではパラリンピックが始まります。さまざまなハンディを背負って自己の可能性に挑む競技者たちの奮戦は、多くの人びとに大きな勇気を与えるに違いありません。ふたたび大会の盛り上がりとその成功を期待します。