2008年8月23日(土)「しんぶん赤旗」
教育のつどい2008分科会
学校で自分好きに
二十二日、京都市内の各会場で二十八の分科会討論が始まった「教育のつどい2008」(教研全国集会)では教育をよくしようという親たちの活動、平和学習の実践など多彩な報告がありました。定時制の高校生も文化祭の取り組みを紹介するなど活発な議論が繰り広げられました。
文化祭 一緒につくる
定時・全日 生徒が交流
すれちがいだった定時制と全日制の生徒が、文化祭の取り組みを通じてあいさつを交わすようになった―。「思春期・青年期の進路と教育」の分科会では長野県の木曽・木曽青峰高校夜間定時制から生徒会を中心とした活動が報告されました。
生徒会顧問の教師(48)は、赴任した二〇〇〇年の文化祭で定時制の生徒がファイアストームに参加せず、廊下からながめているのを見て心をいためました。定時・全日の文化祭の準備の様子をビデオに撮り全生徒で見るなど、全員参加の文化祭への取り組みをすすめました。
男性(18)は、「全日との交流」を掲げ〇七年に生徒会長になりました。みんなの意識を踏まえて取り組もうと、全日の生徒も対象に意識アンケートを実施しました。そこには「一緒に盛り上がろう」「まずあいさつしあえば?」など交流への思いが書かれていました。生徒会はこれを「定時制と全日制の相互理解のために」という小冊子にまとめ、配布しました。
その年の文化祭には定時制の生徒も前夜祭にカラオケとダンスで参加、ジャズ喫茶も出店しました。定時制側の実行委員長(18)は、「全日制の人にあいさつをしても返事がないことが多かったが、『お疲れ。今からか、大変だな』と声がかかるようになった」といいます。
今年も先月、文化祭が開かれました。準備の打ち合わせをやろうと全日制から声がかかってきました。模擬店も出し定時制のしめる役割は毎年、大きくなってきています。
生徒会会長を引き継いだ実行委員長はいいます。
「小学二年から中学三年まで、引きこもっていました。そんな僕がどうして変わったか。一つ言えるのはこの学校に入ったことが大きかった。定時は自分が好きになるところです」
学校訪問10年 予算増
教育条件
「教育条件確立の運動」をテーマにした分科会では、住民の42%の署名を集める運動でいったん民営化された学校給食を公営に戻した(兵庫県稲美町)など、教職員と父母・住民の共同を広げている経験が出されました。教職員だけでなく二人の父母からもリポート報告がありました。
福岡県久留米市の新日本婦人の会の女性は、十年間、「学校ウオッチング」を積み重ねるなか、学校施設関係予算を三、四倍に増やしたことを報告しました。
一九九九年、「学校の雨漏りがひどい」との話から「公共施設を考える会」を結成し、初めて「ウオッチング」をしました。予想を超えたすさまじさでした。雨が降れば生徒たちが机を動かして雨を避け、廊下にはコウモリの巣、水を入れると学校中が断水するプール、使えない消火栓…。
「このような状態で子どもたちの心は豊かに育つのか」と話し合い、地域のイベントやスーパーの一角で学校の写真を展示し、改善署名を集めました。
それから十年。当初は市民団体の訪問に消極的な学校もありましたが、いまでは「ここを見てほしい」と歓迎され、改修も大きくすすんでいます。
新日本婦人の会の京都・右京支部の女性は、教育基本法改悪反対の運動にとりくむなか、地域の中学校区ごとに父母と教職員が連携して「子育て懇談会」を開き、同法改悪後もいっせい学力テスト反対の申し入れを各校でおこなったことを報告しました。
戦争加害にも目向け
平和教育
「社会科教育」の分科会では、千葉県の小学校教師(57)が六年生のクラスでの戦争学習を報告しました。
本や祖父母からの聞き取りで調べた児童たちは当初、日本の戦争被害に目が向いていました。
戦争への認識をさらに深めてもらうために、「アジアで日本と戦争のかかわりがあった国のことを調べよう」と提起。韓国の小学校教師などを講師に招き、インタビュー学習をしました。
児童たちは「ベトナムでは餓死者が二百万人出ている。こんな状況に追い込んだのはいったい誰か」「シンガポールを調べるたびに、日本がアメリカにされたことを日本軍が他の国にしていることに気づいた」などと、日本の加害に目をむけていきました。
「平和と国際連帯の教育」の分科会では、大阪府羽曳野市の小学校教師(56)が実践報告をしました。平和学習で三・四年生の祖父母に戦争体験を語ってもらおうとしたところ、ほとんどが戦後生まれ。そこで校区内の戦争体験者を探すと、五人が快く応じてくれました。
体験者の話に二百二十五人の児童は二時間、聞き入りました。多くの子が泣きながら聞いていたといいます。
八十代の被爆者の女性は背中のケロイドを児童に見せながら、初めて人前で被爆体験を語りました。男性の体験者は「なんとはなしに平和を感じているだろうが、絶対戦争はいかんということを心に思っていないといけない」と児童たちにメッセージを送りました。
京都府の小学校教師(25)は一年生クラスで初挑戦した平和教育について報告しました。
「八月六日は何の日?」という問いかけから始まって、読み聞かせなどで、戦争で傷つくのが「自分や家族だったら」と児童が考えるまでの取り組みを紹介。手探りの奮闘ぶりに温かい拍手があがりました。
貧困から子を守ろう
教育のつどいシンポ
「教育のつどい2008」の現地特別企画として二十二日夜、シンポジウム「貧困の中の子どもたち―今、私たちになにができるか」が京都教育文化センターホールで開かれました。主催は同つどい京都実行委員会で、二百二十人が参加しました。
学校や教育相談、医療、福祉などの現場に日々持ち込まれる過酷な相談をもとにした寸劇で始まり、京都社保協・京都民医連の勘解由(かげゆ)貢一さんは、「子どもの体重減少で診療所にきた母親はほとんど一日一食といい、所持金が四百円だったという事例が京都でありました。分野の違いを乗り越えて交流し、子どもたちを守るために歩みをすすめていきたい」と語りました。
全京都生活と健康を守る会連合会の高橋瞬作さんは、高校を卒業しても初任給が十万円余、社会保険もない職場では生活保護世帯から巣立っていけない事例が増えていることを指摘しました。
府立高教組の佐野幸良さんは、京都の定時制高校の募集停止などを批判し、「高校教育を受ける権利を保障することが行政の責務だ」と話しました。子どもの権利にかかわる弁護士も発言しました。
子どもたちをとりまく貧困の増大と格差の広がりの打開への道を考えていこうと、会場からも保護者や相談員、医療・福祉現場の人たちが、つながりあっていく大切さについての発言が続きました。
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