2008年8月20日(水)「しんぶん赤旗」
北京五輪での熱戦と
自民スポーツ族の溝
○…北京五輪の最中、自民党の麻生太郎幹事長は、今月十日に日本バスケットボール協会長へ就任が決まりました。組織混乱が続いていた同協会は二十二日にも日本オリンピック委員会からの無期限資格停止処分が解ける見通し。「ポスト福田」の首相候補で優位に立つとされる麻生氏の「政治力」が組織混乱をひとまず収めた形です。
○…自民党の中央、地方の議員が各種スポーツ団体の役員に就任する例は枚挙にいとまがないほどです。麻生氏はクレー射撃協会長もつとめています。山崎拓元副総裁はソフトボール協会長、河野洋平衆院議長(自民党籍離脱中)は陸上競技連盟(陸連)会長、橋本聖子参院議員はスケート連盟会長、笹川堯総務会長は空手道連盟会長、石原伸晃元国交相はパワーリフティング協会相談役。福田康夫首相は首相就任までカヌー協会長というぐあい。
並みいるスポーツ族議員のドン(首領)的な存在が森喜朗元首相。ラグビー協会長であると同時にスポーツ団体を束ねる日本体育協会長を兼ねています。
何が自民党政治家とスポーツを結びつけるのか。政治家個人の趣味や関心がもちろんありますが、無視できない要素があります。競技人口一千万人という票田、過激なほどに商業化する国内五兆円といわれる(レジャー白書)スポーツ市場という利権―です。
○…自民党は昨年十月にスポーツ立国調査会(麻生太郎会長)を新たに設置。スポーツ省(庁)の検討や東京五輪招致を推進、秋の臨時国会で「スポーツ立国」宣言の国会決議を準備しています。
自民党がスポーツ振興の旗をいまさらのように振る影で、中央・地方自治体のスポーツ関連予算は先細りしているのが実態です。「豊かなスポーツ環境整備の推進」をうたう文部科学省のスポーツ予算は二〇〇八年度、百九十億円。前年比わずか三億円の増額です。学校給食や公立学校施設まで含む体力づくり関連予算は一九九六年の約四千五百億円をピークに急減し、〇五年には二千六百億円台へ。
○…スポーツ予算が削減されるなか、この間、森、麻生両氏が推進したのが、一九九八年のスポーツ振興法で創設されたサッカーくじ(toto)の導入です。公営ギャンブルの拡大と青少年に射幸心をあおるものと社会的批判を招きましたが、スポーツ振興を名目に強行。ちょうど十年前のことでした。
サッカーくじコンビの片方の森元首相が十七日の民放テレビ番組で「次は麻生さん」とのべ、福田首相の後釜に麻生氏がふさわしいとの考えを示しました。
北京のアスリートたちの純真な競技を見ながら、目を永田町へ転じると自民党政治とスポーツの不純な一面がクローズアップされてきました。(井)