2008年8月18日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
消費者と協力しながら
地域農業守ろう
新潟・十日町市/福岡・京築地域
農業つぶしともいえる自民党農政の食料輸入自由化路線のもとで、日本の食料自給率は40%まで落ち込んでいます。「負けてたまるか」と消費者とも協力しながら、地域農業を守ろうとがんばる人たちを紹介します。
二つのつながり強め
新潟・十日町市
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政府の農業政策に、水田経営所得安定対策(品目横断対策)というものがあります。これは、大規模農家は支援するが、小規模農家は支援しないというものです。このような政策では、農家は国を当てにすることはできませんし、実際は、大規模農家にも困難をもたらしています。
私たち農民連の新潟県十日町市の支部は、農業委員会の農政部会などに働きかけ、ことし四月には農業委員会会長名で首相と農水相に農政の転換を求める建議書を送付しました。日本の農業を担っているのは、さまざまな形態の多様な家族経営であり、実態にあった対策が求められます。
困難な地域でも
私は十日町市松之山水梨で三・五ヘクタールの水田で稲作をしています。松之山は、温泉と豪雪、棚田で知られた町です。三年前に五市町村が合併して十日町市となりました。
十日町市は山間地が多く、高齢化が進み、集落の維持が難しい所も出ています。棚田のため、作業効率が悪く収入の少ない小規模な兼業家族農家が多いのも特徴です。
この現状を解決するために、私たちは二つのつながりの強化に努力しています。
一つ目の取り組みは、「農民連の活動」です。
生産者同士がつながりを持つと言うことは、いろんな経験や体験の情報を交換することにより共通の認識を持てます。毎年納税対策の勉強会などの活動を行っています。税に対する知識が少ないために、不利益を受けていた生産者から感謝の言葉を聞くことも珍しくありません。
こうした地道な活動で、少しずつ地域の生産者同士のつながりをつよめています。
二つめの取り組みは「消費者との交流」です。私の農園では、東京の保育園と十数年前から、自然とかかわる田植え合宿と稲刈り合宿を年二回行っています。それが縁で、保育園で食べる米を買っていただき、保護者会でも毎月注文をいただいています。また、保育園関係者が口コミで周りの人に紹介し、お客様を広げてくれるので大変ありがたいのです。
道を開くために
これからの農家は、同じ生産者同士が連携することで農業環境を守り、消費者との交流を持つことで相互理解や経営の安定化を計って行かなければならないと思います。そのためには、個々の農家では生産の面でも販売の面でも、限界があり、長く続けるにはどうしても組織が必要です。
産地から卸や米屋さんを通じて消費者に届ける農民連の「準産直」が大きな力になります。農民連が大きく成長することで農民の道が開けると確信しています。(十日町市農業委員・農民連十日町支部事務局長、相澤成一)
ナタネ油を委託栽培
福岡・京築地域
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福岡県の東部、築上(ちくじょう)町を中心に活動する京築(けいちく)地区の農民組合は、終戦直後まで稲の裏作としてつくられていたなたねを復活、遺伝子組み替えでない純国産・無添加の「ナタネ油」を届けるトラスト運動(委託栽培)にとりくんでいます。
栽培技術も確立
十年前に新日本婦人の会の“安全な食糧は日本の大地から”のスローガンで始まった「お米の産直」と併せてスタートしました。ナタネ油は、食用油の七割を占めながら、自給率は0・04%にすぎません。
種子は鹿児島県の在来種を分けてもらい、かまで刈り取り、足で踏む、原始的な農法で始めました。いまでは大型農機の一貫作業を確立、暖地向け新品種「ななしきぶ」の開発をはじめ栽培技術も確立し、収量は倍増、十アール当たり三百キロ近くで安定しています。築上町の営農組合もナタネづくりにとりくみ、県内各地に作付けが広がり始めました。
消費者の励まし
米の産直会員には「お米メッセージ」を、トラスト会員には「トラスト通信」を届けています。毎年、春には交流会を行っています。会員からは「福岡のナタネ油かすでお花を咲かせ、ベランダ野菜に挑戦」とか、「アトピーの子どもにも食べさせられるナタネ油のてんぷら」などのメッセージが寄せられます。こうした声を紹介しながら消費者の励ましを支えにがんばっています。
家族農業切り捨ての国政のもとで、行政も農協も“地産地消”、食料の自給率向上や、「若い担い手の育成」を口にはしますが、財政的援助はなく、転作助成金も三年目以降の保障はありません。高齢化も進み、私自身、地域老人会の会長をしています。
赤字で採算のとれない農業を子や孫に継げとは言えないのが現状です。“意地とボランティア精神”でがんばる年金暮らしの高齢者が担い手にならざるを得ません。
「プラン」は命綱
世界的食料不足の中で、輸入ナタネの価格も値上がりしています。安全を求める消費者の励ましでやっと広がりつつある私たちのナタネづくりも、原油の高騰による農業資材の軒なみ値上げ(化成肥料は二倍)で赤字は目に見えています。
農政の方向を変え、実効ある支援策を講じなければ続けられなくなります。農業は食料の問題であり、それを食べる全国民の問題です。
日本共産党が、「食料自給率の向上を真剣にめざし、安心して農業にはげめる農政への転換」を提起した「農業再生プラン」は掛け値なしの“命綱”になりそうです。(京築農民組合書記長・木本正見)
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