2008年8月18日(月)「しんぶん赤旗」
温暖化 国土12%水没
2100年
海面上昇1メートルで1千万人移住
ベトナム政府が予測
二一〇〇年、ベトナムは最大一メートルの海面上昇で九州と同規模の面積が水没、毎年大きな経済的損失が出る―。ベトナム政府が現在作成中の「気候変動に対する国家プログラム」で、温暖化による大規模な被害を想定していることがわかりました。(ハノイ=井上歩)
プログラムの草案によると、海面が一メートル上昇した場合、メコンデルタを中心に約四万平方キロ(国土の約12%)が水没し、人口の約10%(一千万人以上)が移住を強いられたり、農地を失うなどの影響を受けるといいます。
南部のメコンデルタで土地の80%、北部の紅河デルタで土地の30%は、海面からの高さが二・五メートル以下で、雨期には洪水、乾期には干ばつや塩害などの深刻な被害を受けるとしています。
気温上昇は三度と予測。北部を中心に農業生産に大きな影響があるとしています。台風、洪水、干ばつなどの天災が増加するとも予想しています。
損害額は数兆円
毎年の損害額は国内総生産(GDP)の10―11%に上ると予想。ベトナムは高い経済成長率が見込まれており、将来の被害額は日本円で数兆円規模になる可能性もあります。
草案によると、二〇〇〇年までの五十年間でベトナムの平均気温は〇・七度上昇。海面は約二十センチ上昇しました。この影響で台風の規模が大きくなり、発生時期や経路が変化していると指摘。ハノイで霧雨が降る日がこの十年間、一九八一―九〇年と比べておよそ半数に減っているなどの変化もあげました。
資源・環境省によると、気候変動対策に政府は二兆四千億ドン(約百六十億円)を支出し、温暖化問題に対応する科学技術研究や人材育成、法案・行動計画作成にあてる予定です。
「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が昨年十一月に出した第四次統合報告書は、二一〇〇年の海面上昇を十八―五十九センチと予測。ベトナム政府は、今年四月の欧州地球科学連合大会などで発表があった新しい研究成果に基づき、海面上昇は一メートルに達すると想定しました。
ベトナムは温暖化で最も深刻な被害を受ける国の一つとされています。世界銀行によると、ベトナムは日本をのぞく東アジアで、海面上昇で影響を受ける国土面積と人口の割合が最も高い国です。
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