2008年8月17日(日)「しんぶん赤旗」

「決定的場面」と日本共産党

派遣労働 「原則自由化」に唯一反対

不安定雇用是正のたたかい励ます


 日雇い派遣、偽装請負、ワーキングプア―。なぜこんな非人間的な労働が広がったのか。きっかけになったのが一九九九年の労働者派遣法の大改悪です。このとき他党がみな賛成するなかで、今日の深刻な事態を予測して反対の論戦を展開したのが日本共産党でした。当時は孤立したたたかいに見えましたが、政府も与野党もこぞって派遣法の改正を言い出しているいま、ここまで状況を動かした「決定的な場面」として光っています。


 労働者を企業に貸し出して利益をえるいわゆる「人貸し業」は、戦後、職業安定法で禁じられました。その例外として一九八五年に労働者派遣法ができて、対象業務を限定して公認されました。九九年の改定案は、これを港湾、建設、警備をのぞいてすべての業務に広げるという内容です。対象業務限定から「原則自由化」への大改悪です。

 日本共産党は、これが通れば、正社員の派遣への切り替えが大規模にすすみ、いつでも解雇できる不安定雇用労働者の大群を生み出すことになるとして、反対の態度を決めました。

 当時、日本弁護士連合会も反対声明を出しました。ところが日本共産党以外に反対する政党はありませんでした。新聞、テレビもいまでこそ派遣問題を熱心に報道していますが、当時は関心を示さず、こんな重大な法案が国会に出ていることを国民の多くは知らない状態でした。

闘争を展開

 日本共産党は、全労連など労働組合と共同して攻勢的な反対闘争を展開しました。衆院での審議入りを前にした同年四月、国会議員団が独自の改正案を発表しました。法律の名前を「労働者保護法」に改めること、派遣業務の対象拡大は行わず縮小する、などの抜本的な提案でした。いま「偽装請負」として大問題になっている製造現場への違法派遣の規制ももりこんでいます。

 六月二十九日の参議院労働・社会政策委員会で採決に先立って反対討論にたったのが市田忠義議員(現党書記局長)です。市田氏は、反対理由として「派遣の対象業務の拡大は大量の低賃金、無権利の労働者をつくりださざるをえない」「常用労働者の派遣労働者への置きかえが加速する」「派遣労働者の保護にかかわる規定が不十分である」「請負という名で大規模に派遣労働者化がすすめられている実態について有効な措置を講じていない」という四点をあげました。

 対照的なのが他党。自民、民主、公明など各党を代表して公明党の山本保議員が「労働者に多様な選択肢を確保し、就業機会の拡大を図るため」に「時宜を得た内容と考える」と賛成討論しました。いまではまったく通用しない主張です。

 市田氏は、「あの時、私たちが指摘したことが誰も否定できない現実になり、派遣労働の規制強化へと流れが変わってきた。当時はこういう情勢になるとは思いもしなかった」と、劇的変化を述懐しました。そして「法案に反対しているのはわが党だけだから、論戦は非常に重要で、私は土日の休みを返上して、議員会館にこもって必死に質問準備をしたことを覚えています」と語りました。

 このときの参院労働・社会政策委員会の委員長は日本共産党の吉岡吉典議員でした。他党が労働省(当時)のスケジュールにそって法案の採決を主張した最終盤の理事会で、徹底審議の必要性を筋道をたてて説いた異例の発言が、いまも語り草になっています。

 「戦後の労働者保護法制の歴史的な転換といえる重要な法案を中途半端な審議で終わらせたら、国会が歴史的責任を果たさないことになる。後に誰が見ても審議をつくしたといわれるような、記録として残していく慎重審議が必要だ」

 こういう論旨でした。当時を振り返って吉岡氏は「数は相手が上回っていたが、政治的には私たちが優位に立っていた。結局は、われわれが主張した通りになった」と語りました。

 九九年の派遣労働の「原則自由化」に唯一反対した日本共産党は、「偽装請負」など違法派遣を告発してたちあがった労働者、労働組合への励ましになり、ともに事態を動かす力になってきました。松下、トヨタ関連、シャープ、キヤノンなど大企業関連職場からいっせいにたたかいがおこりました。日雇い派遣など人間を使い捨てる劣悪な不安定雇用を改善するために労働組合をつくる若者たち。「しんぶん赤旗」のキャンペーンを追いかけるように、新聞、テレビも大きく報じるようになりました。

改正を要求

 日本共産党は、昨年十二月に、あらためて労働者派遣法を「『派遣労働者保護法』に抜本的に改める」という改正要求を出しました。九九年につぐ二度目の全面的な改正要求です。これをもとに、ことし四月、改正法案を発表し、各党、関係団体にたいし共同して法改正にとりくむことを呼びかけました。

 とくに流れを劇的に変えたのが志位和夫委員長の二月の派遣問題にしぼった国会質問です。このなかで福田首相は、日雇い派遣について「決して好ましいものではない」といい、正社員から派遣への大規模な置きかえをすすめているキヤノンの実態についても「厚生労働省に確認をさせたい」と答弁しました。六月に志位委員長がキヤノン長浜工場を訪問したさい、本社の諸江昭彦専務が「製造派遣は年内に解消する」と表明しました。派遣労働の是正へ、政府と大企業を動かした瞬間でした。


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