2008年8月17日(日)「しんぶん赤旗」

増える孤独死 団地で何が

高齢化急速、9年間も募集せず

東京・足立 花畑団地


 東京都足立区の花畑団地で、七十六歳の男性が孤独死した後も、都市再生機構(UR、旧日本住宅公団)が八カ月も家賃を金融機関口座から引き落とし続けていたことが七月、報道で明らかになりました。この悲劇は、増えつづける孤独死の問題点を浮き彫りにしています。

 (日本共産党国民運動委員会 高瀬康正)


UR調査

 花畑団地(二千七百二十五戸)は一九六四年に入居が始まりました。入居当時は、子育て世代が圧倒的。「かつては、ひとつの住棟から二十人ぐらい子どもが出てきて登校していましたが、いまは団地全体で二十人ぐらい」。団地清掃に当たる女性は語ります。

65歳以上が65%

写真

(写真)孤独死のあった58号棟=東京都足立区の花畑団地

 URによると同団地では、現在六十五歳以上の世帯主が全体の65%近くを占めています。足立区の平均は20・8%で、高齢化が急速にすすんでいるといえます。

 自治会では孤独死防止に努力しています。七十歳以上の高齢者の希望者を登録。十人ぐらいのボランティアで月一―二回電話し、安否を確かめています。

 亡くなった男性が住んでいた五十八号棟の同じフロアに住む女性は、「男性の向かいに住む女性から『最近ドアの開閉の音がしない。おかしいのではないか』との情報があり、すぐ管理事務所に連絡した。後日、男性がすでに亡くなっていたとの電話があった」といいます。

約千戸が空き家

 花畑団地には現在約一千戸の空き家があります。同団地が建て替え対象団地になったため、URが九年間、空き家募集を行わなかったためです。住棟によっては一―二戸しか住んでいない状態で、住民同士の交流が希薄になっています。商店街もスーパーや銀行が撤退。団地内での買い物が不自由になり、空洞化は周りの商店にも波及しています。

 昨年十二月末、URが発表した「ストック再生・再編方針」で花畑団地は、一部を建て替えることや、団地を集約化して空き地を売却することなどを内容とした「団地再生(複合型)」に区分されました。

 団地自治会がことし二月に行ったアンケート調査では、「団地内の住戸に住み続けたい」と答えた世帯が63・8%を占め、団地外に転居を希望する世帯はわずか5・1%でした。

 日本共産党の伊藤和彦区議は、「居住者は政府とURの方針にほんろうされている。居住者と自治会、行政、そしてURが一体となって孤独死対策を講じるとともに、区民・住民のニーズにそった団地再生のあり方を探求する必要がある」と語っています。

現代社会の病理映す? 交流希薄化リストラも

 「孤独死」についてURは、「団地内で発生した死亡事故のうち、病死又は変死の一形態で、死亡時に単身居住している賃借人が、誰にも看取られることなく賃貸住宅内で死亡した事故(自殺及び他殺は除く)」と広義に定義付けています。

 URの調査によると、UR賃貸住宅内での孤独死発生状況は、二〇〇六年度は五百十七件にのぼり、一九九九年度の二・五倍になっています。

 URでは、その原因を「居住者の高齢化を反映したものだが、同時に、地域から孤立するなどコミュニティー意識の希薄化が遠因と推測される」とし、「単身高齢者の見守りなど現在取り組んでいるものもあるが、今後、自治会や行政と連携した取り組みをすすめる中で、機構(UR)がどのような役割を果たすことができるのか検討していく必要がある」と述べています。

 また、同調査では、五十歳代、六十歳代前半の孤独死が増えていることも特徴です。

 〇四年―〇六年の三年間の発生件数をみると六十五歳未満の孤独死が36%を占めています。

 この結果について、関係者からは「リストラ、アルコール依存症といった現代社会が抱える病理現象もあるのではないか」と指摘する声も聞かれました。

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