2008年8月17日(日)「しんぶん赤旗」
主張
経済対策
「暮らし重視」をいうなら
福田内閣は、八月末にむけて「安心実現のための総合対策」の名称で、物価高などへの緊急対策を含む経済政策をとりまとめる準備をすすめています。
「総合対策」の策定が急浮上した背景には、景気が後退局面に入ったとの判断から、財界が景気対策を強く求めていることに加え、「暮らし重視」の姿勢を国民にアピールすることで、福田内閣の不人気になんとか歯止めをかけようとのねらいがあります。
家計脅かす原因直視こそ
いま国民の暮らしは、失業・雇用不安、低賃金、物価高、重税などが重なって、かつてないほど悪化しています。とりわけ年金生活者や病気で苦しむ人のいる家計は、相次ぐ医療制度の改悪や福祉削減、物価急騰で生活苦に拍車がかかっています。また燃油や食料品など原材料の高騰によって、農漁業者、中小業者の経営は廃業寸前の耐え難い状態に追い込まれています。
福田内閣が「暮らし重視」の緊急対策をいうなら、その中身は、いま現実に家計を脅かしている原因を直視し、国民の切実な要求をとりあげて、それを緊急に実現するものでなければなりません。
ところが、今回、福田内閣が準備している緊急対策の重要な特徴は、それを「総合対策」(総合的な経済政策)の中に含め、財界・大企業が要求する「成長戦略」の一環に位置づけていることです。十一日に開かれた「総合対策のための政府・与党会議」では、「総合対策」の基本になる「考え方」の第一に「改革を通じて経済成長を実現」、第二に「財政健全化路線の下」をあげています。
いま「経済成長の実現」をかかげるなら、これまで六年間の「構造改革」路線のもとでの「経済成長」がだれのための成長だったか、真摯(しんし)な反省が必要です。
「戦後最長の経済成長」といいながら、「繁栄」したのは一握りの輸出大企業だけでした。自公政権や財界は、「大企業が栄えれば、いずれ家計におよぶ」などと言い続けてきましたが、国民の暮らしは苦しくなる一方でした。さらに、自公政権の「財政健全化路線」そのものが、国民の暮らしを苦しめてきました。
福田内閣の経済政策や予算編成の指針となる「経済財政改革の基本方針」(「骨太方針〇八」)では、社会保障の自然増を毎年二千二百億円も削減する方針の継承を盛り込みました。七月末に閣議決定した来年度予算概算要求基準でも、「財政健全化路線」の名で、それを確実に実行するとしています。こうした路線の推進と「安心実現」「暮らし重視」とは、まったく相いれません。
経済政策の軸足転換して
日本共産党の第六回中央委員会総会(六中総)決定では、国民生活防衛の緊急対策として「最も深刻な被害をうけている農業関係者、漁業関係者、中小・零細企業などにたいして、直接補てんで燃油の価格を下げること、減税措置をおこなうこと」「福祉・医療・教育などの分野にも、政府としての負担軽減策」を要求しました。
国民生活の防衛のためにも、「外需頼み」から内需主導に「経済成長」のあり方を変え、大企業から家計・国民へ、経済政策の軸足を転換することが不可欠です。そのためにも、「構造改革」路線は根本から転換すべきです。
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