2008年8月16日(土)「しんぶん赤旗」
最賃改定へ
ヤマ場 地方審議会
「千円以上必要」 東京都報告
中央最低賃金審議会で今年の最低賃金改定の目安が答申されたのを受けて、各県ごとの改定額を決める地方の最低賃金審議会での審議がヤマ場を迎えています。
今年は、憲法二五条の生存権規定が盛り込まれ、生活保護基準を下回ってはならないと改正された最賃法施行後初めての改定です。
目安は、全国平均で十五円の引き上げ額を提示する一方、最低賃金が生活保護基準を下回る逆転現象が生じている十二都道府県では、九円から八十九円の引き上げを二年から五年かけて解消することを求めました。
しかし、逆転解消のため八十円の引き上げが必要だとされた東京都では、審議会で都の生活保護担当者が逆転解消には三百円以上の引き上げが必要で、時給千円以上が求められると報告しました。
中央の目安が低いのは最賃と比べる生活保護基準を低く見積もっているためですが、地方審議会で中央の目安を上回る引き上げが焦点になっています。
かい離
都の試算は、二十五歳の単身者が現行最賃(七百三十九円)並みの時給七百四十円で一日八時間、月二十日間働いた場合を想定。生活扶助基準は一番高い級地とし、必要経費などを控除しました。
それによると、収入から社会保険料や交通費などを控除すると七万八千三十円しかないため、生活保護基準(十二万八千七百円)に満たない分の五万六百七十円が支給されます。
生活保護基準を上回るためには、時給で千五十六円が必要になってくる計算です。
国が都に示した生活保護基準とのかい離額八十円が実態を反映していないことが浮き彫りになっています。
国の場合、生活保護基準には県内平均を用い、必要経費なども控除していません。生活保護基準を下回るのは十二都道府県しかないのもそのためです。
全労連の試算では、すべての都道府県で生活保護基準より四百円―五百円も下回っていることが明らかになっています。
低算定
目安では生活保護との逆転現象を解消できないことは、マスコミからも「県庁所在地などでみると、まだ大半の都道府県で生活保護より低い」(「読売」十二日付)と指摘されています。
全労連は、中央の目安審議では、生計費にもとづいてあるべき最低賃金の水準を明らかにし、どこまで迫るのかを論議すべきだったが、生活保護水準を低く算定し、あるべき最低賃金水準を引き下げてしまったと指摘しています。
「地方審議会では、生計費原則の欠如を埋める審議を行い、目安を大きく乗り越える改定をめざすべきである」と指摘し、「せめて時給千円以上」を求める世論と運動を広げて、それに大きく接近するような改定を実現させようと呼びかけています。
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