2008年8月11日(月)「しんぶん赤旗」
主張
米軍機爆音被害
カネですます態度が問題だ
「爆音のない静かな生活環境を返せ」―。米軍機の飛行差し止めと賠償を国に求める爆音訴訟が全国各地でたたかわれています。
裁判所が出すどの判決も、過去の爆音の被害に対する賠償は認めますが、飛行の差し止め要求は認めません。それをいいことに、政府はカネをだすだけで、飛行差し止め要求を拒否し続けています。
国民が爆音で苦しんでいるのは政府が米軍に基地を提供し続けているからです。政府には爆音の苦しみから国民を救う責任があります。飛行容認の態度をやめ、飛行禁止のための対米交渉にふみだすことが求められます。
平和的生存権の否定
沖縄県宜野湾市の住民らが夜間や早朝の飛行禁止などを求めていた普天間基地爆音訴訟で、那覇地裁は六月二十六日、国に約一億四千万円の賠償を命じました。しかし、肝心要の飛行差し止め要求は認めていません。沖縄県嘉手納基地、東京都横田基地、神奈川県厚木基地などの爆音訴訟判決と同じ流れです。判決に、「この国は主権国家なのか」と怒りの声があがっているのは当然です。
爆音被害に苦しむ住民の数はぼう大です。沖縄では、普天間基地と嘉手納基地による爆音被害は県民の39%にあたる約五十二万人におよびます。横田基地周辺では約十一万人、厚木基地周辺は二百万人以上ともいわれます。山口県岩国基地や青森県三沢基地の周辺住民も苦しんでいます。基地周辺だけでなく、米軍が全国規模で勝手に飛行ルートを決め、地をはうように実施する低空飛行訓練も、耐えがたい苦しみを各地の住民に与え続けています。
米軍機の爆音はがまんできるものではありません。電話も家族の対話もできない、テレビの音も聞こえない、勉強もできない、乳児が寝付かないし泣きやまない、心臓がばくばくする、頭がくらくらする、という悲痛な訴えを、政府は正面から受け止めるべきです。
政府は夜間・早朝の飛行規制を強めるといいますが、米軍は作戦運用を理由にして規制の約束をほごにしているのが実態です。
国民の苦しみにもかかわらず、米軍は「日本防衛」のためだなどといって日本の空を支配し続けています。しかし、こんな言い分は通用しません。日本の「防衛計画の大綱」も侵略のおこる可能性は「低下」といっています。
世界各地への軍事介入に備えるのが米軍機の活動であり、飛行訓練の目的です。アメリカの先制攻撃戦略にもとづく戦争態勢を強化するために、日本国民を犠牲にさせるわけにはいきません。
沖縄の基地は占領の最中に米軍が住民から土地を奪い、「銃剣とブルドーザー」で拡張したものです。本土の基地も占領のさい接収した基地をそのまま日本に押し付けたものです。基地撤去は当然です。
対米折衝にふみきれ
米軍基地は爆音被害をはじめ墜落事故や米軍犯罪などの諸悪の根源です。基地を認めたままでは平和も平穏な生活も台無しです。
憲法は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(二五条)と明記しています。爆音をまきちらす米軍機の飛行が憲法違反にあたることは明白です。政府はアメリカいいなりをやめて、飛行禁止のための対米折衝にふみきるべきです。
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