2008年8月6日(水)「しんぶん赤旗」
最低賃金改定の目安
法改正に背く抑え込み
中央最低賃金審議会小委員会が五日にまとめた最低賃金改定の目安は、全国平均十五円増となりました。近年にない引き上げとなった昨年の十四円に続くものですが、貧困と格差が拡大するなか「せめて時給千円以上に」と求める国民の願いには極めて不十分です。
今年度の審議は、七月施行の改正最低賃金法で生活保護基準を下回らないとされ、成長力底上げ戦略推進円卓会議で政労使が「高卒初任給の最低水準」を目指すことで合意したのをふまえて、大幅引き上げが焦点でした。
小委員会では、引き上げ幅を地域別で十五―七円とし、最賃が生活保護水準を下回る逆転現象の十二都道府県には上積みを求めることにしました。
時給七百円台に乗るとはいえ、年収にしても百五十万円にもならず、時給千円に到達するには二十年もかかる計算です。百円以上もある大都市と地方の格差をさらに拡大することになりかねません。
逆転現象も最大五年かけて解消するとしており、速やかな解消が求められる法改正の趣旨にも反しています。
小委員会で労働側はナショナルミニマム(最低生活保障)をめざして本年は五十円程度の引き上げを主張。指標とする生活保護基準には、県庁所在地の基準を使うことや所定内労働時間を用いるなど必要生計費を反映させるよう求めました。
これに対し使用者側は、原油高などで中小企業の経営が苦しいとして大幅引き上げに反対。生活保護基準には県平均値を使い、勤労控除を除くなど生活保護水準を抑え込みました。生活保護との逆転現象は十二都道府県、かい離も最大八十九円にとどまりました。
全労連などの試算でも、あるべき生活保護水準は時間額千円から千二百円となり、全都道府県で四百―五百円も下回っているのが実態です。不十分な生活保護基準を抑え込むのではなく、低すぎる最低賃金を引き上げることこそ求められます。
経営側は中小企業の経営悪化を理由に大幅引き上げに反対しますが、経営悪化は最低賃金のせいではなく、家計より大企業のもうけ優先の失政が招いた景気低迷や親企業による単価の切り下げなど不公正取引にあります。
政府の労働経済白書でも、中小企業の厳しい経営環境の背景として「消費を初めとした国内需要の伸びの低迷、大企業の利益志向の強まりがある」と指摘し、「中小零細企業における賃金の改善」などを打ち出さざるをえなくなっています。最賃引き上げこそ内需を拡大し、中小企業の経営難を打開していく力になるものです。
最賃引き上げのたたかいは地方の最賃審議会に移ります。物価高騰による生活危機を打開するためにも大幅引き上げは急務になっており、生活できる最低賃金めざすたたかいはこれからです。(深山直人)
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