2008年8月6日(水)「しんぶん赤旗」

「自立と支え合い」強調

厚生労働白書を閣議決定


 政府は五日の閣議で二〇〇八年度版の厚生労働白書を決定し、公表しました。今年のテーマは「生涯を通じた自立と支え合い」。国民一人ひとりの「自立」「自助」を基本とする社会保障制度を強調しました。不安定雇用や貧困が広がるなかで、国民に「自助努力」を強く求めることは、社会保障制度にたいする国や地方自治体の責任をさらに後退させるものです。

 白書では「『自立』と『支え合い』」の制度確立が、厚労省の「重要な任務」と明記。「すべての人が意欲と能力を最大限発揮できる」ような「自立」のための環境整備を優先的な課題に挙げました。

 一方で、社会保障の役割については、「個人の責任や自助努力のみでは対応できないリスク」に対応するものと範囲を限定。その内容も、まず医療保険などの社会保険の「共助」(相互扶助)の生活保障が一義的にあり、それでも対応できない状況になってから、「公助」(税金などで支える生活保障)で支えるとしました。

 また白書では、「今後社会保障に係る給付と負担が増大していくことは避けられない状況」と記述。「負担水準を給付水準と一体として議論しながら、信頼される社会保障制度の整備に努めていく」として、社会保障財源確保を名目にした負担増議論の必要性をにじませました。

 国民の批判が集中している後期高齢者医療制度については、国民に説明し、「制度の円滑な運営を図る」ことを強調。

 宙に浮いた年金記録問題などについては「真摯(しんし)に反省」などと述べながら、年金記録問題の国の責任を消し去る社会保険庁解体を推進する姿勢を示しました。


社会保障“お荷物論”には反論

 「社会保障は経済社会の発展を支える重要なものであることを忘れてはならない」。五日発表された厚生労働白書は、政府・与党内や財界などから出される「社会保障費の増大は経済成長にとってマイナス」という“お荷物論”にこう反論しています。

 白書では、社会保障分野の「総波及効果」(モノやサービスなどに対する需要の増加が所得の増加などをもたらす効果)が、全産業平均より高く、「精密機械」産業などに匹敵する規模であることを指摘。

 また、介護・福祉サービス分野の従業員数が急増していることを挙げ、「新たな雇用創出も期待される分野」としています。

 さらに、公的年金が地域の生活に与える影響についても試算。一九九六年度と二〇〇五年度を比較すると、県民所得が伸び悩むなか、県民所得に占める年金総額の割合が全国計で6・3%から10・1%へと増加していることなどを記述しました。

 ただ実際の年金給付額は低く抑えられ、消費拡大にはとても十分とはいえません。介護報酬抑制によって介護現場の労働条件は厳しい状態です。

 白書が、「社会保障が経済成長にマイナス」という社会保障費抑制論に反論を試みたことは注目されますが、経済発展に寄与することに見合った規模の給付へ増加させることにもっと力を注いでほしいところです。(宮沢毅)


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