2008年8月5日(火)「しんぶん赤旗」
原水爆禁止二〇〇八年世界大会
国際会議宣言
(全文)
原水爆禁止二〇〇八年世界大会・国際会議が四日、採択した「国際会議宣言」は次のとおりです。
広島・長崎の被爆から六十三年。あの悲劇を繰り返させてはならないという被爆者の叫びは人々の心をとらえ、核兵器廃絶の声は世界の大勢となっている。二十一世紀を、核兵器の脅威から解放された新しい平和な時代としよう、との決意が広がっている。われわれはこの実現のため連帯し行動することを、世界のすべての人々によびかける。
核兵器は人類の生存と世界平和を脅かし続けている。いまなお核保有国は二万六千発の核兵器を貯蔵、配備している。そして数千発が即時発射態勢におかれている。とりわけ米国は、「テロと核拡散」が「新たな脅威」であるとして、核兵器廃絶を拒否するばかりか、先制軍事攻撃と核兵器使用計画が一体になった危険な戦略をすすめ、新型核兵器の開発、先制攻撃を補完する「ミサイル防衛」システムの開発・配備などを続けている。これは、拡散問題の解決を妨げる重大な要因ともなっている。
テロや核拡散の防止という理由で、核兵器の保有、まして核脅迫や軍事攻撃を正当化するなどということは、もはやまったく通用しない。悲惨な状況がつづくイラクやアフガニスタンの現状は、拡散問題の平和的解決、核兵器の廃絶、平和の国際秩序確立こそが進むべき道であることを示している。
核抑止論の欺瞞(ぎまん)が明白になる中で、「核兵器のない世界」を求める声が、新たな広がりをみせている。核保有国や軍事同盟諸国の政府関係者のなかからも、核兵器の危険を根絶するために、核保有国自身が核兵器廃絶にむけ行動すべきだという声があがっている。
全世界の圧倒的な人びとが核兵器のない世界を望み、非核兵器地帯は東南アジア、中央アジア、モンゴル、アフリカ、中南米、南太平洋など全地球に広がっている。大多数の国が「非核兵器国」として核不拡散条約に加わり、みずからに核兵器の開発・保有を放棄する条約上の義務を課している。
いまこそ核兵器全面禁止・廃絶へ、確かな一歩を踏み出すときである。そのために求められることは、世界政治、とりわけ核保有国の決断であり、諸国民の連帯した行動である。
われわれは世界のすべての政府に、核兵器全面禁止・廃絶条約の協議開始を国連総会で決議するよう、強く提唱する。
二〇〇〇年五月、核不拡散条約(NPT)再検討会議で「自国の核兵器の完全廃絶」を「明確な約束」として受け入れた五つの核保有国は、この約束を誠実に実行しなければならない。二〇一〇年春のNPT再検討会議にむかって、「核兵器完全廃絶」の約束をはじめ、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効、核分裂物質製造禁止条約(FMCT)の交渉開始、中東非核地帯の実現など、これまでの合意の順守と実行を要求する。
すべての核保有国とその同盟国に、核による威嚇と使用計画の放棄、発射態勢解除、「ミサイル防衛」計画の中止、非核兵器国への安全保障、核兵器の大幅削減、「抑止」や「核の傘」など核兵器に依存した戦略の放棄を要求する。
二〇一〇年のNPT再検討会議は、核兵器廃絶への展望を切りひらく重要な機会である。われわれは、NPT再検討会議にいたる二十カ月間、「核兵器のない世界」を共通の目標とする全世界的な行動キャンペーンを提唱する。核兵器廃絶を求める署名運動を軸に、多彩で創意あふれるとりくみによって世界をつなぐ、国際共同行動をくりひろげよう。
また、この行動の重要な一環として、広島・長崎の被爆者、世界の核被害者と連帯し、原爆展、被爆者・核被害者の証言活動など、被害の実態を全世界の人びと、とりわけ若い世代に伝えるための多彩な行動を計画し、広めるようよびかける。
われわれは、反戦平和、枯れ葉剤など戦争被害の救済、地球環境の保護、化石燃料や原子力依存からの脱却、食料問題の解決、貧困・欠乏・飢餓の克服、軍事費の大幅削減、経済のグローバル化の弊害打破などを求める諸運動と連帯し、「核兵器のない平和で公正な世界」のために、力をあわせるようよびかける。
日本は、人類史上唯一、核戦争の惨禍を体験し、戦争と戦力を放棄する憲法九条と非核三原則の国是を持つ国として、すみやかな核兵器の廃絶のためにイニシアチブを発揮することが強く求められている。しかし実際には、「核の傘」の名のもとにアメリカの核戦略に深く組みこまれ、太平洋、インド洋、中東へと軍事行動をくり広げるアメリカの艦船などの出撃拠点とされ、さらに原子力空母の横須賀配備などが進められている。
われわれは、このような危険な動きに反対し、憲法をまもり、非核平和の日本のためにたたかう人びとに、強い連帯を表明する。
人類の未来は諸国民の連帯した行動によってこそ切りひらかれる。被爆者とともに、そして明日を担う若い世代とともに、いまこそ行動に立ち上がろう。
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