2008年8月4日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
原水爆禁止世界大会
被爆地へ行く
原水爆禁止2008年世界大会が9日まで、広島と長崎で開かれます。「核兵器のない世界をつくろう」という大会には、全国各地でさまざまな取り組みをしてきた青年たちが参加します。そのなかから、秋田の高校生と東京の大学生の取り組みを紹介します。(伊藤悠希、行沢寛史)
17歳を変えた“折り鶴”
戦争が教科書を飛び出した
秋田
「こうやって折るんだよ」―。秋田駅の連絡通路に並べた机の上で会話をしながら鶴を折る高校生たち。「21万羽おりづるプロジェクト」の呼びかけに応じ、折り鶴を集めています。
日本民主青年同盟(民青同盟)秋田県委員会・原水爆禁止世界大会青年ツアー実行委員会は7月13、26、27の3日間、「折り鶴宣伝」をしました。
これまでに集めた折り鶴は2万羽。1月に決めた5千羽の目標を大きく上回っています。
「ここまで集まると思ってなかった」と話すのは、秋田で折り鶴を集めるきっかけをつくった高校生の愛さん(17)。昨年の世界大会に兄の和君(17)と参加しました。被爆者の話を聞き、資料館では原爆の熱線で溶けたビンに触れました。「教科書の中だけで知っていた戦争が本当にあったんだって実感できました」
全国高校生平和集会にも参加し、「秋田からも何かやりたい」と思った愛さん。爆心地や資料館に置いてあった折り鶴を思い出し、帰りの飛行機の中で和君に折り鶴を集めようと提案しました。
和君も同じ気持ちでした。帰ってきた二人は平和のことを学び、行動したいと民青同盟に入りました。民青同盟県委員会は二人の思いを受け止め、折り鶴宣伝に協力するとともに、さまざまな団体に折り鶴集めを要請。各団体からも続々と集まりはじめました。
部活の友達の智子さん(17)も折り鶴宣伝を手伝いました。
「なぜ21万羽なの?」との疑問に答える学習会も開催。参加した智子さんは「原爆で21万人も亡くなったと知って衝撃だった。世界中どこにも落とされない世界になってほしいな」と参加を決めました。
広島へは18時間かけて車で向かいます。
愛さんは「世界青年のつどい」で発言します。和君も参加します。
「去年は何も知らずに参加したけど、今回は学習し、折り鶴を集めての参加です。ドキドキしてます」と愛さん。
和君は言います。
「折り鶴をきっかけに友達の輪が広がった。折り鶴はおれを変えてくれました。おれたちのやってきたことを聞いて、何かやり始めてくれたらちょっとうれしい」(名前は仮名です)
平和が学問の自由守る
世界の流れの一翼 私の誇り
東京
東京では、東京都学生自治会連合がよびかけて東京学生ツアー実行委員会が結成され、事前に合宿を開いて学ぶなどして参加します。
合宿は、東京学生九条の会「Peace Night 9」実行委員会との共催。東京原水協の石村和弘事務局長を講師に学習し、広島で被爆した方の話を聞きました。
ツアー実行委員会の男性は「参加者が成長して各大学での平和の取り組み、核兵器廃絶の運動を広げたい」と意気込みます。
事前に学習会を開くなどしてきた早稲田大学学生九条の会「article 9」代表で広島県出身の男子学生(2年生)は、初めて世界大会に参加します。小中学生の頃から被爆者の話を聞いてきた男子学生は「広島の地から核兵器をなくす声をあげたい」といいます。
東京大学では、教養学部自治会にある平和擁護委員会がクラス入りし、署名を集めてきました。取り組みの中心となったメンバーが「被爆者の思いを学んでこよう」と、世界大会に参加します。
平和擁護委員長の男子学生(1年生)は「平和が学問の自由を守ると聞きました。唯一の被爆国の国民として、広島であったようなことが絶対に起こらないよう、みんなの力で運動を広げたい」と語ります。
「自分たちの運動が核兵器をなくそうという世界の流れの一翼を担っていることが誇らしい」と話すのは、中央大学2年生の高山亜美さん(仮名)。昨年に続き2回目の参加です。中央大学では、映画「夕凪の街 桜の国」の鑑賞会などを開いてきました。
高山さんは「世界大会で多くの人たちと交流して、大学で仲間と運動を広げたい」と意欲的です。
21万羽おりづるプロジェクト 広島、長崎で原爆投下の年の1945年末までに亡くなった原爆死没者21万人分の折り鶴を街頭や学校などで集めて、被害の大きさを実感しようという高校生や青年たちの取り組みです。
お悩みHunter
退学したら学費は戻らない?
Q 今年春、服飾デザインの専門学校に入学しました。入学金と1年分の授業料など初年度納付金を約100万円納めました。ところが、家庭の事情で通えなくなり、7月初めに退学を申し出たら、学校から「納付金はいっさい返せない」と言われました。(20歳、女性)
難しいが可能性も。ぜひ相談を
A 大学や専門学校で入学を辞退しても、納付金を返還しないとする不返還特約をめぐる裁判で、2年前、最高裁(大学については最判平18・11・27、専門学校については最判平18・12・22)で判決が出されました。
それによると、(1)入学金は学校に入学できる地位に対する対価であり、学生がその地位を取得した以上、入学を辞退しても、学校は返還義務を負わないとしました。
一方、(2)授業料は学校で教育を受けたり施設を利用することの対価であり、年度開始の4月1日より前に在学契約を解除した場合には、学生は対価を受けていない以上、原則として授業料は返還すべきだとしています。
しかし、(3)年度開始日以後に解除した場合は、学校は教育の提供を開始しているので返還する義務はないとしました。
ですから、中途で退学したあなたの場合、納付金の返還を求めるのは難しいと考えられます。
ただし、最高裁は不返還特約が有効となる根拠として、年度開始日以後に欠員を生じても学生の補充が難しいこと、学校が1年単位で教育給付を準備していることなど、解除で1年分の授業料相当分の損害が生じることを指摘しています。
あなたの通っていた学校が年度途中でも随時学生を募集しているとか、授業内容が1年単位ではないなどの事情がある場合は結論が変わる場合もあり得ます。
ぜひ、弁護士に相談してください。
弁護士 岸 松江さん
東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。