2008年8月4日(月)「しんぶん赤旗」
主張
米原潜放射能漏れ
原子力艦船とは共存できない
米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが、放射能を含んだ水を垂れ流したまま、長崎県の佐世保港などに寄港していた可能性が高いことが明らかになり、佐世保をはじめ、横須賀(神奈川県)、沖縄など全国に衝撃が広がっています。
米艦船は五十年間「一度たりとも」放射能を出したことはないといいはってきた米政府が、放射能漏れの可能性を認めたことは重大です。米政府の説明をうのみに、「安全」をいいはる日本政府の態度では、国民の生命、健康を守ることはできません。政府は事故原因の徹底調査を求め、米原子力艦船の入港を拒否すべきです。
吹き飛んだ「安全神話」
今回の事故は、ヒューストンが七月十七日にハワイで定期点検を受けたさい、水兵がバルブのふたが外れて流れ出た水を浴び、二十四日になってその水から放射能が検出されたというものです。米海軍は、数カ月にわたって放射能を含む水を垂れ流していた可能性があると認めています。
米政府からの連絡にもとづき日本の外務省は、「冷却水が一部しみだし(た)」事故と発表していますが、含まれていた放射能はどんな種類だったのかなど、肝心なことは米軍も説明を避けています。
放射能は「ごく微量」といいますが、数カ月にわたって放射能をふくむ水を垂れ流していたということ自体、日本にとって重大です。ヒューストンは今年三月二十七日から四月二日の間と四月六日に佐世保に寄港しています。それ以前には沖縄県うるま市の米軍ホワイトビーチ沖にも停泊しています。日本の調査で放射能は検出されていませんが、米政府には寄港時や停泊時に放射能を垂れ流していたのか、データの提供を含めて、調査し報告する責任があります。
今回の事故では通報の遅れも重大です。米政府が日本(外務省)に通報したのは一日午後です。異常が発覚してから二週間、放射能を検出してからでも一週間後です。外務省の発表も報道後です。ことは放射能漏れという重大問題なのに、あってはならないことです。
米原潜はこれまでも佐世保、横須賀、沖縄などに寄港したさい、日本側の調査などで何度も放射能漏れが指摘されてきました。しかし米政府は「放射能は出したことはない」の一点張りで、科学的説明や資料提供要求も「軍事機密」をたてにすべて拒絶し、原子力艦船は核事故を起こさないという、勝手な「安全神話」をふりまいてきました。
「ごく微量」であれ、放射能を垂れ流していたことを認めた今回の事故は、「安全神話」が成り立たないことを米政府自ら認めたことにほかなりません。それは、米原子力艦船の寄港を受け入れ続ける限り、絶えず重大な事故の危険にさらされるということであり、原子力艦船の寄港受け入れは根本から見直す必要があります。
寄港・配備を許さない
今回、米政府も日本政府も放射能漏れを「ごく微量」といいはるのは、九月末に予定している原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀配備を考えてのことです。
しかし原子力空母の配備は、一年の半分は港に停泊することを意味します。核事故の危険も比較にならぬほど大きくなります。原子力空母の横須賀配備を許さないたたかいが、いよいよ重要です。
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