2008年7月31日(木)「しんぶん赤旗」

主張

WTO交渉決裂

「自由化」絶対論の克服を


 世界貿易機関(WTO)の閣僚会議がマラソン交渉の末に決裂しました。ドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)は今後の見通しが立たず、WTOのあり方が問い直されようとしています。

 日本政府は、主食のコメをはじめ農産物市場をさらに開放し、がけっぷちにある日本農業を破たんに追い込む約束をする寸前でした。いまこそ通商、農業政策を抜本的に転換すべきです。

途上国側の強い反発

 交渉が決裂した直接の要因には、中国やインドなど新興国の力をそぎたい米国が、輸入急増時の緊急輸入制限措置の発動基準を厳しくするよう新興国に圧力を加えたことがあげられています。底流には、貿易自由化を押し付ける米国への途上国側の強い反発があります。ドーハ・ラウンドが途上国の開発重視を掲げて開始されてからも、交渉はもっぱら輸入国の市場開放を目的にし、存在感を強める途上国の主張を抑えるものとなってきました。

 七年越しのドーハ・ラウンドが二〇〇三年のカンクン閣僚会議をはじめ四度も決裂に追い込まれたことは、WTOの基本的なあり方に矛盾があることを示しています。最大の問題は、“貿易自由化”を絶対視する立場から交渉を進めてきたことにあります。

 交渉は加盟百五十三カ国それぞれの経済のあり方を左右します。WTOは食料輸入国の農業を掘り崩し、食料危機の一因となってきました。途上国の工業発展を妨げ、サービス協定を通じて金融、通信や人間生活に不可欠な水道などの分野にまで、多国籍企業の利益を確保しようとしてきました。食料危機やその主因である投機、地球温暖化など世界がいま直面している諸問題に深くかかわっていながら、交渉はこれらの問題に何ら応えていません。

 WTOに対する批判は世界に広がっています。ボリビアのモラレス大統領は閣僚会議に送った公開書簡で、交渉が「先進国が自国の大企業の利益のために途上国の市場を開かせるための争いの場」になっていると指摘し、「自由貿易」ではなく、平等を基礎として各国の持続可能な発展を可能にするものでなければならないと主張しています。日本共産党の志位和夫委員長は、WTOを「米国中心の機関から世界の国々の人民の声が反映した機関へと民主的に改革していくことが差し迫った課題」だと強調しました。

農業切り捨てる福田政権

 福田政権は財界・輸出大企業の利益を優先し、農業問題では最初から譲歩を重ねました。甘利明経済産業相は交渉初日、「日本は農業で苦痛を受けるのだから、工業品やサービスで成果をあげねばならない」と演説しました。日本経団連が、貿易自由化を「繁栄を実現する上で不可欠」とし、交渉の年内妥結に向けて努めるとしていることに、軌を一にしています。

 六月の世界食料サミット以来、食料自給率を50%以上に引き上げるとの方針を宣伝してきた福田康夫首相も、公約違反を厳しく問われなければなりません。

 世界的な食料危機の中、自由化一辺倒を推し進めてきたWTO協定そのものがもはや通用しなくなっています。食料主権をはじめ各国の経済主権を保障する貿易ルールへの民主的改革が急務です。



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