2008年7月30日(水)「しんぶん赤旗」

主張

概算要求基準

社会保障抑制の大もとを正せ


 福田内閣が来年度予算の大枠を示す概算要求基準(シーリング)を決めました。社会保障費の自然増を二千二百億円削減する抑制路線を来年度も続ける方針です。

 小泉内閣以来の社会保障予算の抑制は、医療や介護、年金、生活保護など、命と暮らしに直結する社会保障のあらゆる分野で深刻な問題を引き起こしています。

破壊的な打撃が

 社会保障の国庫負担は高齢化や医療技術の発展に伴って増加していきます。この自然増を認めず、必要な予算を削減することは、社会保障の支えを必要としている国民の痛みに直結します。

 二〇〇二年度の三千億円カットから始まった社会保障の国庫負担の削減は、〇三年度からは毎年二千二百億円を減らし続け、七年目に入りました。後期高齢者医療制度の導入や母子家庭の生活保護費の削減など、制度改悪による国庫負担の削減の影響はその年だけにとどまらず、年々上積みされていきます。〇一年度と比べた今年度の累積影響額は一・六兆円を超える計算です。これが社会保障に破壊的な打撃を与えています。

 国民の厳しい批判や通常国会での日本共産党などの追及を受けて福田内閣は医師不足の実態を認め、予算の「重点化枠」を設けるとしています。さらに基礎年金の最低保障機能の強化を検討するなど、社会保障の「五つの安心プラン」を発表しました。

 「医療崩壊」や年金保険料が高すぎることによる無年金、低年金の問題に緊急に対応するのは当然です。しかし、毎年二千二百億円を削るという、社会保障を破壊してきた大もとの方針を継続するなら、来年度の累積影響額は一・八兆円を上回ります。これでは、底が抜けたバケツに手のひらで水をすくい入れるようなものです。

 深刻な問題が次々と噴出しているにもかかわらず、福田内閣と自公は社会保障の抑制路線をやめることができません。経済財政諮問会議が二十八日にまとめた「平成21年度予算の全体像」は、来年度の予算編成方針の第一に「改革努力の継続」を掲げています。破たんが明らかな路線を根本から改める意思も能力もなく、ただ部分的に取り繕うだけで「構造改革」にしがみつく末期的な姿が浮き彫りになっています。

 その根源には、スポンサーである財界のかたくなな要求があります。日本経団連が自民、民主に突きつけている「優先政策事項」は、社会保障給付の伸びを抑制し社会保障の役割を限りなく切り縮めるよう求めています。同時に、社会保障財源として、大企業は価格にすべて転嫁することで負担を逃れられる消費税の増税を要求し、社会保険料の企業負担の軽減を狙っています。

財界言いなり政治

 日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は、自民党の谷垣禎一・政調会長らとの「政策を語る会」で次のようにのべました。「改革を後押しするため、政策評価を実施し、それに基づいた政治寄付を呼びかける」

 命と暮らしをないがしろにする社会保障抑制路線の根本には、企業献金による露骨な政策の買収と財界言いなりの政治があります。

 大企業の負担軽減や道路中期計画を優先し、社会保障を犠牲にするやり方を転換することが切実に求められます。



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