2008年7月28日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
青年教職員の37%が経験
ハラスメント
いま、多くの職場で深刻になっているハラスメント(いじめ、嫌がらせ)。学校でも青年教職員に対するハラスメントが大きな問題になっています。全日本教職員組合(全教)青年部が行った調査から見えてきたものは―。(伊藤悠希、染矢ゆう子)
全教青年部が調査
全教青年部が行った「青年教職員に対するハラスメントについての調査」(35歳以下1978人・21都道府県・2007年11月―08年3月)では、回答者の約37%がハラスメントを実際に受けたと答えました。都道府県別に見ると、東京が54%と最も多く、次いで大阪が48%でした。
●アンケートの自由記入欄に寄せられた声
・子どもや保護者の前でしっ責された。
・子どもへの指導の在り方など一方的に考えを押し付けられた。
・自分と同意見でないと不機嫌になり、後で呼び出された。
・校長に意見したら強制的に退出させられた。
・職員会議で管理職の考えに賛成する発言をするよう強要された。
・年休など正当な権利への拒否・圧力を受けた。
・質問をしても指導されない。
●受けた暴言の例
「教員失格だ。やめてしまえ」「お前はここにいること自体おかしい」「毎朝児童のことをするよりも、何よりも校長にあいさつにいかなきゃいけない」「新採は『はい』といっていればいいんだよ、でしゃばるんじゃない」「子ども(妊娠)はめでたいことだけど、教員にとっては迷惑。今年は妊娠しないでほしい」「若いうちは滅私奉公だ」
行政に対策とる責任
青年部長の岩田さん
全教青年部の岩田彦太郎部長(34)は今回の調査について、「職場でのハラスメントに悩む教職員の相談や青年部の会議で報告を聞くことが多くなり、調査をするようになった」と話します。
調査は、セクハラ(性的な言動による嫌がらせ)やパワハラ(地位や権限を利用した嫌がらせ)などのハラスメントが、職場でどのように起きているのか実態を把握するために行いました。
青年部は文科省に調査結果を提出し、ハラスメント調査や対策を行うよう要請しました。しかし、文科省は「パワハラの定義がない」として調査をする予定がないと回答しています。
岩田さんは「学校教育は、教職員が集団で行うもの。子どもたちが安心感を持って学べる環境をつくるためにもハラスメント対策を取る必要があります。EU諸国は職場のハラスメントを労働問題としてとらえています。行政が責任をもって対策を行うことが重要です」と話します。
青年部では、(1)ハラスメントで悩む教職員への緊急の対応(2)人間らしく働き子どもと教育に責任をもてる良好な職場づくり(3)職場のハラスメントを構造的に生み出している「競争と管理」の教育政策の転換―の取り組みを進めたいとしています。
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管理強化が背景に
杉井静子弁護士の話 ハラスメントを「受けた」と答えた教職員が37%いるのは一般職よりも高い傾向にあると思います。学校職場は長時間勤務、多忙化による余裕のなさ、管理強化によるストレスが背景にあるからだと思います。
妊娠や出産に対する否定的な言動も、ゆとりのない人員と多忙化のなかでのものでしょう。働きやすい職場環境、権利が守られていないことの現れです。
ハラスメントは相手が望んでいないことをする行為です。人格を否定することは人権侵害に当たり、セクシュアルハラスメント以外のハラスメントの規定がないからといって、何の対策も講じないことは許されません。
使用者には労働者の心身の健康を守り、働きやすい環境を整える義務があります。教育職場の場合は文科省が使用者に当たります。放置せず、まずは実態調査をやるなど、対策を取る責任があります。
非正規雇用が広がり、労働者が人として扱われず、成果主義の導入で一人ひとりが分断されている状況が社会全体に広がってハラスメントが起きています。個人の問題にせず、社会問題として取り組む必要があります。
子どもたちも被害者
初任者のときにパワハラをうけた女性教師の話
教師になって初めての年に小学校低学年を担任しました。
校長先生は、「毎月計算テスト90点以上」など約20項目の数値目標を掲げて、校長室に、クラス別の目標達成度を示すグラフを張り出していました。
目標ができないと「君の力がないからだ」と、授業中に突然入ってきてどなりつけられました。
子どもの前でしかられると、子どもが担任を信頼しなくなり、余計クラスが荒れることになりました。
これ以上しかられたくないプレッシャーで、学習障害の疑いがある子に、ものすごい怒り方をしていました。
ほかのやり方でも教えたいのに、算数の授業が計算練習ばかりになってしまいました。
やりたくないことを強制している自分が嫌になり、教師をつづける意味もわからなくなり、人格まで壊れそうでした。
「明日テストやるからね」と教室で話した夜、一人の子どもが「緊張して眠れない」と寝つけなかったことを子どもの母親から聞きました。いつも百点をとる子でした。
パワハラの一方の被害者は子どもたちです。
誰が考えてもおかしいことが校長先生一人の権限で進められていることが問題だと思います。
お悩みHunter
たばこを母に没収されました
Q 母に「高校生の喫煙は厳禁」と言われ、たばこを没収されてしまいました。たばこは友達にすすめられ、ときどき自分の部屋で気晴らしに吸っていたものです。だれにも迷惑をかけた訳じゃないし、たばこを吸う母には言われたくない感じなんですが。(17歳、女性、神奈川県)
もう一回り「おとな」になって
A 17歳の喫煙は、れっきとした法律違反。娘の喫煙を放置すれば、監督不行き届きで親が罰せられます。未成年の娘に「吸うな」というのは、親としての責任でしょう。もちろん学校も厳しい処分を下すはず。
なんてこと、あなたなら百も承知。こんなに言われるときっとムカつくことでしょう。
喫煙したくなる娘の気持ちなどちっとも受けとめようとしないで、一方的にしかるだけ。そんなおとなにイラ立っているのかもしれません。
でもそんなおとなに振り回されるなんて損。もっと自分を大切にしてほしいです。
「だれにも迷惑かけてない」という“反発”、本気かな? とてもそう思えない。
実は、社会的には大迷惑なのです。当人はフィルターを使用。でも周囲の人は強制的に受動喫煙を迫られる。本人の何倍も健康被害を受ける。喫煙者の肺がん率は高く、治療に要する医療費は「兆」を超え、大きな財政負担。
それに、妊娠中の喫煙は、赤ちゃんの成長を阻害します。夫の喫煙さえ禁じられているほど。だからこそお母さんは、娘に嫌われても「やめろ」と言い続けているのかもしれません。
私も絶対やめた方がいいと思いますよ。ここはもう一回り「おとな」になって、自分と周囲の人々を大切にしてやってください。
教育評論家 尾木 直樹さん
法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。