2008年7月26日(土)「しんぶん赤旗」

主張

ASEAN

平和外交の求心力として


 東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議と同地域フォーラム(ARF)など一連の年次会合がシンガポールで開かれました。ASEANは域内の多国間協力の枠組みとしてだけでなく、日本を含む北東アジアと世界の平和に貢献しています。平和の地域共同体としてのASEANの活動は、日本共産党の志位和夫委員長が指摘した「(起こりうる)紛争を戦争にしない英知」の一つです。

拡大するTAC

 ASEANが主導し米国や日本、中国、ロシア、インドなど二十六カ国とEUが参加するARFは、参加国の信頼醸成を基本とし、アジア・太平洋地域での主要な政治対話の場として重要性を高めてきました。

 今年注目されたのが、朝鮮半島の非核化をめざす六カ国協議の初めての外相会合がこの機会に開かれたことでした。会合は、北朝鮮の核申告の検証をはじめとして非核化プロセスを前進させる政治意思を確認しました。ASEANは六カ国協議を通じた朝鮮半島の非核化を一貫して支持しています。北東アジアの安全保障問題の焦点である六カ国協議の努力を側面支援し、それを通じて東アジアの平和の枠組みづくりを進める立場を示しています。

 ASEANと域外諸国との平和の共同を広げる基本的な枠組みが「東南アジア友好協力条約」(TAC)です。軍事を排除した安全保障の枠組みとして、国連憲章を基礎に独立と主権の尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決などを原則としています。

 TACは、米国の侵略によって東南アジアが分断されたベトナム戦争の歴史的経験に立ち、戦争終結後の一九七六年に同地域の永続的平和を目的に結ばれました。八七年からは域外諸国にも開かれました。域外諸国がTACに次々と加入するようになったのは米国がイラクに侵攻した二〇〇三年以降で、米国の一国覇権主義への警戒と新たな平和の国際秩序を求める各国の意思が反映しています。

 今回北朝鮮が加入し、TAC加入国は日本、韓国、中国、フランスなど二十五カ国になりました。加入によって北朝鮮も国際ルールに沿って平和構築に責任を負うとともに他の加入国との交流・協力の促進を求められます。

 ASEANが北朝鮮に加入を働きかけたのには、北朝鮮を法的にも国際社会の一員として迎え入れることが、六カ国協議の前進と東アジアの平和にとって有意義だとの認識がうかがえます。全加盟国が北朝鮮と国交を持ち、域外との協力を広げてきたASEANの独自な役割を示しています。

域内問題でも

 今回の会議直前に生じたタイとカンボジアとの領土をめぐる緊張やミャンマーの民主化問題など、ASEANもさまざまな問題を抱えています。ASEAN外相会議とARFはこれらの問題でも、域内で平和的に解決する基本的な道筋を示しました。

 議長国シンガポールのヨー外相は一連の会議が「だれも予想しなかったほどうまくいった」とし、ASEAN流の形式ばらない外交スタイルと中立を保つ地域組織としてのASEANの位置の有効性を指摘したと伝えられます。ASEANは平和外交の求心力としての存在感を一段と強めています。


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