2008年7月21日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
貧困 自分を責めないで
仲間と見つけた
大阪 学習・集会・アンケート
「貧困や生活が苦しいのは自分たちの責任じゃないんだ」。大阪市の木津川南地区(住吉、住之江、西成、大正の各区)で、「自己責任」論を乗りこえて、反貧困に立ち上がった青年たちがいます。(浜島のぞみ)
「行ってよかった。4年前、体を壊して働けなくなったけど、もし正社員だったら、あんなにも自分を追い詰め、みじめに思ったりしなかったかもしれない。少しだけ救われた気がしました」。こんな感想が寄せられた集会が先月、西成区内で開かれました。青年が自らの体験をリレートークし、貧困の実態を告発する学習交流会です。190人が参加しました。
留学中のスウェーデンから一時帰国した女性は、「なぜ若いうちに自分の能力、人生を見限る状況なのか。スウェーデンでは、自己責任論はありえない。生活の不満が政治やシステムに向かわず、弱い者同士がにくみ合う状況は、人間性の破壊だと思う」と、感想用紙に書き込みました。
主催したのは、民青同盟木津川南地区委員会、日本共産党木津川南地区委員会、各区労連などが集まって4月に発足した実行委員会です。
この日までに、青年実行委員会は、22回の街頭宣伝と生活実態アンケート調査に取り組み、600人以上(39歳以下)の回答を得ました。
青年実行委員会では、毎回1、2時間かけて、『反貧困』(湯浅誠著)、『労働組合の視点』(槙野理啓著)を読み合わせ、討論を重ねてきました。
「両親が生活保護を受けていたけど、生活保護が必要とされる世帯は思っていたよりはるかに多い。社会全体が貧乏で、うっぷんがぶつかり合っている感じ」「人が頑張れるようになるには条件がいる。居場所があることだと思う」
次第にメンバーは、自分の生い立ちや生活苦の実態を話せるようになりました。
変えたい
実行委員会は、青年が苦しんでいる実態を肌身で感じようとアンケート活動にとりくみました。中心となった安達雅之さん(26)は、「知らない人に声をかけるのは抵抗があったけど、どんな働き方をしているか知りたい気持ちが勝った」といいます。知れば知るほど、「変えたい」という気持ちが強くなるからです。労働者の権利について知らされず、やり場のない不安の原因を自分や他人に求めている人がたくさんいました。
安達さんも、日雇い労働に苦しめられてきました。大学卒業時に就職が決まらず、学童保育指導員のアルバイトをした後、派遣会社に登録。日雇いで工場のライン作業、配送仕分け、引っ越し作業など。「命令された仕事を無難にこなそうとするのが当たり前になり、考えることをしなくなっていました」
中途採用に応募しても、即戦力を求める企業からは日雇い労働を経験と見てもらえず、次つぎ不採用に。「自分には何も残っていない。どうせこの程度の仕事しかできないんだ」と落ち込み、日雇い派遣を続けました。
転機が訪れたのは3年前、友人に誘われ民青同盟に加盟したことです。派遣現場と違い、きちんと人間として向き合ってもらえる仲間がいました。「ここでは、自分をさらけ出してもいいんや」。少しずつ、自分で考え、意見を声にだせるようになりました。
周囲からも「変わったよね」と言われるようになった安達さん。今は民青同盟の地区副委員長です。
声大きく
共産党と民青同盟がおこなった街角相談がきっかけで実行委員に加わった女性(32)もいます。就職氷河期に短大を卒業し、事務職や軽作業の派遣・アルバイトを10年にわたって経験。正社員をめざして職業訓練校に通い、やっと正社員に採用されました。
民青同盟の友人から労働者の権利について教えられ、会社で就業規則などの疑問をぶつけました。ところが上司は「会社の方針が気に入らないなら解雇予告手当を払ってでも解雇する。労基署に訴えたら懲戒解雇にする」。1カ月後、「適性がない」「あなたがいると空気が停滞する」と解雇通告されました。
「会社の意に沿わない人を金の力で簡単に切り捨てる。労働者をモノ扱いする経営者がまん延している社会は異常です」。この女性はたたかう決意を固めました。
青年実行委員会は、10月の全国青年大集会にむけて、街頭宣伝、アンケート調査をつづけています。
父親の借金返済に苦しんだ男性(24)は、共産党と民青同盟に相談して救われました。「政府や財界が私たちに責任を転嫁し、自己責任論をふりまいていることを知りました。私たちは悪くありません。そのことを多くの青年はまだ知らない。もっと声を大きくしていきたい」と話しています。
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アンケートに寄せられた声
●1年目なので、なかなか要領もつかめず、家でも仕事をしている。だいたい朝7時に行って、夜7時に帰り、それから寝るまでずっと仕事。(21歳、女性、正規社員)
●夜勤の上、長時間勤務で仕事量が濃い。社員になって、管理職的な仕事もしているが、一時期管理職手当がもらえたが、今はもらえなくなった。(29歳、男性、正規社員)
●毎日のように派遣先が変わるので人間関係も仕事のノウハウも築けない。休日なんか取ったら、その分お金がもらえないので、休めない。事故やミスが起きても知らされない。慣れていないことを初めから教えられるので、ミスが多くなる。(20歳代、女性、派遣社員)
お悩みHunter
子ども扱いの親 うるさいが
Q 一人暮らしをやめ、数年ぶりに実家に戻り両親と暮らしています。両親は、「ハンカチ持った?」「雨だから長靴はいていきなさい」など、子ども扱い。バイトで帰りの遅い私を起きて待っていたりします。心配してくれるのは分かりますが、うるさくてたまりません。(群馬県 アルバイト 女性 26歳)
落ち着いて本音伝えて
A 親にとって子どもは、いくつになっても小さいころのままなのでしょうかね。子どもにとって親は、いくつになっても元気なままの親であってほしいと望んでしまうように。
ご両親はあなたの成長についていけてないのかもしれませんね。数年間離れて暮らしていたからかもしれませんし、性格なのかもしれません。
ご両親の言動がうるさくてたまらない、あなたの気持ちは十分わかります。その上で、あなたがもう一歩おとなになって、ご両親に自分はもう小さい子どもではないということを理解させてあげてはどうでしょうか。
子ども扱いされるのは、うるさくてたまらない、というあなたの本音を、ご両親が理解できるように落ち着いて伝えたことはありますか。
一度の話し合いで分かってもらえなくても、いろんな方法でアプローチしてみてはどうでしょうか。それでも、たまらなくなったら、我慢せず、一人暮らしをおすすめします。
子どもは成長し、おとなになり、自立していく。そのことを親は理解しなくてはなりません。と、同時に、親は年をとり、老いて、体にさまざまな支障が出て一人では生きていけなくなる。そのとき、子や社会はそんな親を受け止め、支えてあげなくてはなりません。
これから、よりよい親子関係を築いていく努力をしていってはどうでしょうか。
舞台女優 有馬 理恵さん
「肝っ玉お母とその子供達」など多くの作品に出演。水上勉作「釈迦内柩唄」はライフワーク。日本平和委員会理事。