2008年7月20日(日)「しんぶん赤旗」

主張

児童扶養手当

父子家庭にも支援の拡充を


 母子・父子家庭という配偶者のいない「ひとり親家庭」が増えています。ひとり親になった原因や背景はさまざまですが、母子家庭はもちろん父子家庭も緊急に支援する必要があります。

 父子家庭になって困り果て、「何か公的補助があるだろう」と自治体の福祉窓口を訪ねてから初めて“父子家庭には支援策がない”とわかってがっくりきた―という父親が少なくありません。

現状への理解を広げ

 「父子家庭の子どもにも国は手を差し伸べてほしい」と十七日、ひとり親のネットワークの人たちが国にたいし、児童扶養手当制度の改正などを申し入れました。

 父子家庭の父親も、収入を得るために「子どもの寝顔しか見られない」「家事は夜中に音を立てないようにやっている」というのが実態です。父親の子育てへの社会的な理解の遅れもあり、長時間労働を強いられ、転職せざるを得ない人も少なくありません。「残業・休日出勤なし」「転勤なし」という条件で仕事を探せば、パートやアルバイトなど低賃金の仕事に就かざるを得ません。「母子家庭に支給されている児童扶養手当を、父子家庭にも支給してほしい」という願いは切実です。

 児童扶養手当法(一九六一年制定)は第一条で「この法律は、父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため」とあり、父子家庭は収入にかかわらず、支給対象から除外されています。

 母子家庭の場合、かつて死別については母子福祉年金制度がありましたが、経済的な困窮は生別も死別も同じであり、離婚による母子家庭にも社会保障制度が必要だという議論がおこり、児童扶養手当法が制定されました。約七十五万世帯のうち九割が離婚など生別母子家庭で、平均年収は二百十三万円、一般世帯の三分の一です。現在は年収三百六十五万円未満の母子家庭に、所得に応じて最高で月約四万二千円が支給されます。

 父子家庭も年々増えています。父子家庭になった理由も死別が減り、離婚が急増しています。働きながらひとり親が子育てをする困難さは同じですが、父子家庭には国の支援策はありません。「母子家庭の母の方が就業状況等がより厳し」く、「取扱いの差異は不合理なものではない」(日本共産党佐々木憲昭衆院議員の質問主意書への答弁書)というのが、政府の言い分です。

 厚労省の「全国母子世帯等調査」(二〇〇六年度)によると、父子家庭の平均年収は四百二十一万円で、母子家庭の二百十三万円を上回っています。ところが年収三百万円未満の父子家庭が37・2%も占めています。一部の世帯を除けば、父子家庭への支援も切実さは変わりはありません。

必要な支援策の拡大

 ひとり親家庭は、緊急時に頼りにできる親や親しい友人が近くにいないケースが多く、国や自治体のきめ細かい対策が必要です。

 政府が父子家庭への支援に背を向けているなか、母子家庭と同様の手当を支給する自治体が各地に広がりつつあります。国の制度としても児童扶養手当法改正をはじめ新たな対策を拡充し、ひとり親が「子育ては大変だが幸せだ」と思えるような支援が求められます。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp