2008年7月18日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「消費者庁」構想
政治への深い反省に立って
福田内閣は、「消費者・生活者の視点」にもとづいて来年度から消費者庁を発足させるとし、六月二十七日に「消費者行政推進基本計画」を閣議決定しました。
消費者軽視の行政の責任
消費者とは、商品やサービスを購入する勤労者・国民にほかなりません。企業と消費者を比較した場合、製品や役務を判断する情報量にしても、交渉力にしても、消費者が弱い立場におかれています。だからこそ、行政による消費者保護が本来優先されるべきです。
そもそも憲法では国政の主人公は国民であり、生命・自由および幸福追求にたいする国民の権利は「最大の尊重を必要とする」(一三条)と明記されています。
二〇〇一年の省庁再編で「内閣府」が設置され、産業分野の縦割り行政を排除して、消費者保護を図るとされてきました。また、〇四年の消費者基本法では、消費者の権利を明確にしたうえで、国や事業者の責務を明記しています。にもかかわらず、長期にわたる自民党政治のもとで国民の生活と権利はないがしろにされ、大企業のもうけ優先の横暴がはびこり、消費者の被害がくりかえされてきました。
保険会社による保険金不払い問題では、利益第一主義に走る業界の体質とともに、これから消費者を守るどころか、「自由化」をあおってきた金融行政の姿勢が問われています。また、パロマのガス機器中毒死亡事故では、二十年以上にもわたってCO中毒事故が生じ、死者二十一人を出していたのに、緊急命令が出されたのは、一昨年八月です。
政府に規制権限がありながら、消費者被害の防止・救済よりも企業損失を懸念した行政の対応、「国民共有の財産」といわれる事故情報さえ、各省庁間・省庁内部で共有していない実態が明らかになりました。
国民の安全をめぐる分野でも、「規制緩和」政策が進められてきたことも重大です。「事前規制から事後チェックへ」「消費者保護から消費者の自立支援へ」が行政の役割とされ、消費者行政が縮小されてきました。
「消費者庁」をつくるうえで、「消費者保護」よりも「産業優先」をすすめ、安全の分野まで「規制緩和」してきたこれまでの政治への深い反省にたち、「消費者庁」への財政上の配慮はもちろん、他省庁や企業への権限を明確にする必要があります。
同時に、省庁再編だけではなく、国民生活センターの拡充とともに、消費者にもっとも近い市区町村の消費者相談窓口の抜本的強化が必要です。
基本計画はまだ不十分
「消費者行政推進基本計画」では、地域ごとの消費者行政は、「自治事務」であるから地方自治体自らが消費者行政部門に予算、人員を重点配分すべきだとし、国の財源確保については努力目標です。
被害者救済のための措置については、「法的措置の検討をすすめる」との表現にとどまっています。
OECD(経済協力開発機構)は昨年、事業者の違法収益の剥奪(はくだつ)や被害者への還付をはじめ、被害者救済の仕組みをつくることを勧告しました。これにそって、直ちに実効ある制度を導入すべきです。
消費者の目線にたった抜本的な消費者行政の拡充こそ必要です。