2008年7月12日(土)「しんぶん赤旗」
主張
大分県教員採用汚職
うみ出し切り民主的制度を
校長先生がわが子を教員に採用させるため百万円単位の金品を配る、教育委員会の上層部が採用試験の成績を改ざんして「合格」させる、お金を積まない受験生は点数を低く書き換えられ不合格になる、成績の改ざんは合格者の半数におよぶ―。大分県の教員採用汚職事件は底なしの様相です。
傷つけられる子ども
小学校の教員採用だけでなく中学校や校長・教頭昇進をめぐっても汚職があり、複数の県議会議員も口利きしていたこと、これらは以前から常態化していたことなどが報じられています。一党支持しめつけの教職員組合の関与の可能性も報じられました。
正しいことを教えてくれるはずなのに、不正でなった先生がいる。そのことを子どもはどんな思いで見ているでしょうか。まじめに努力してきた先生も傷つきます。徹底して全容を解明すべきです。
子どもが好きで教育に人生をかけたい、そんな思いで多くの人が教員の道を選びます。ところがその入り口が、教委や地方のボスにお願いすれば入れる、そうでなければ入れないとなれば、その先は言わずもがなです。教員の世界には表と裏があり、「上の言うことをきかなければならない」ということになってしまいます。
そんな閉鎖的で前近代的な場で、教育の理想が追求できるでしょうか。教員採用の不正は、教員の世界を腐らせ、子どもの教育をゆがめる構造の一端です。
大分県以外でも不正がおこなわれている可能性があるとの疑いをぬぐうことはできません。また一般の公務員でも黒い噂(うわさ)はたえません。事件を契機に、全国から教員採用などの不正をなくしていこうではありませんか。
教員や公務員といえば地域住民の信頼に支えられるべき職業です。それに地方のボスが口利きをし、そのことがさらにボス支配をつよめる、これは日本の民主主義をほりくずすものでもあります。
教員の世界に非民主的な風潮を押しつけてきた大本は、自民党政治です。政府は長年、国のいうとおりの教育をおこなうよう地方をしめつけてきました。くしくも大分は、教基法改悪のとき、文科省が「やらせ」のタウンミーティングをおこなわせた県の一つです。
私たちは何より、不正が起きない民主的で公正な採用制度をつくることを訴えます。
採点者に受験者が分からないようにする、選考作業でも受験番号や氏名が分からないようにする、採点結果の入力・集計での透明さの確保などです。
同時に、採点基準や解答を公表し、点数を受験者に開示して、受験者の側からもチェックできるようにすることは、採用の際の思想・信条上の差別をやめさせる上でも重要です。
自由に物が言える場に
さらに、教育委員会や学校を、子ども、保護者、教職員らに開かれた、自由に物が言える場にすることです。自由に物が言えない雰囲気がある限り、ボスの人事支配は、形をかえて残るでしょう。
教育委員会を上意下達でなく、教育現場の声に耳を傾け、子どものための専門的な助言をおこなう機関にかえるとともに、職員会議の民主的運営、子どもや保護者らの学校運営への参画などを進めようではありませんか。