2008年7月9日(水)「しんぶん赤旗」
開門へ政治決断を
農水省前、有明漁民訴え
諫早湾干拓事業の潮受け堤防開門の決断が迫られる東京・霞が関の農水省を八日、大漁旗や「宝の海を返せ」ののぼりをかかげた有明海沿岸漁民らの「控訴するな」の声がつつみました。
国に五年間の開門調査を命じた佐賀地裁判をうけ、「よみがえれ!有明訴訟原告団・弁護団」が始めた座り込み要請行動の二日目。雨の中、漁民らは「若林正俊農水相は水門をあける政治決断を」とマイクを握りました。
佐賀県有明海漁協南川副支所の川崎賢朗さん(47)は「先行きに不安をかかえて、自殺したり、廃業する漁業者もいる。日銭を稼ぐためにタマネギを作っている漁師もいる。漁師は海で仕事をするのが生きがいなのに。一日も早く水門をあけろ」と迫ります。
佐賀県有明海漁協の佐々木成人さん(39)も「何年たったら農水省に自分たちの思いがとどくのか。控訴断念と開門を心から願っている」と訴えます。
「農水省は漁民の声を聞け」と怒るのは福岡県柳川市のノリ漁業者の男性(46)。「干拓事業による漁業被害を認め、開門を命じた佐賀地裁の判決をむだにしたくない」。そんな思いで上京し座り込みました。「潮受け堤防を閉め切られて、潮流がコロっと変わった。ノリ大不作のときには水揚げが平年の20%に落ちた。家族で精いっぱいやっても、せいぜい六、七割しか回復しない。開門こそが自分ら漁民の希望の灯だ」
弁護団が声明 国は控訴やめよ
農水省の諫早湾干拓事業の潮受け堤防の開門を国に命じた佐賀地裁判決の控訴期限(十一日)を前に、「よみがえれ!有明海訴訟弁護団」(馬奈木昭雄団長)は、国に控訴断念を求める声明を発表し、福田首相にたいしても開門の政治決断を迫る要請文を送付しました。
声明は「ただちに開門をという声は、全国から燎原(りょうげん)の火のごとく広がっている」と指摘。「開門にともなう防災や干拓農地における営農に関する不安」は解決が可能だが、漁業被害救済は「開門以外にはありえない」と強調しています。
福田首相にたいし「いまこそ開門を実現し、あらたな有明海再生事業に乗り出す政治決断を」と求めています。
佐賀県知事が農水相要請
農水省諫早湾干拓事業の潮受け堤防の水門開門を命じた佐賀地裁判決の控訴期限が十一日に迫り、古川康・佐賀県知事は八日、佐賀市長ら有明海沿岸の市長らとともに上京し、若林正俊農水相に控訴断念と開門調査を要請しました。