2008年7月9日(水)「しんぶん赤旗」

全保有国に核削減要求

原発促進の危険も

G8政治文書


 北海道洞爺湖サミット文書の政治分野では、二〇一〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向け、初めて「すべての核兵器国」に対して「透明な形で核兵器を削減」するよう求めました。主要核保有国が集まるサミットでの「核削減」の確認は、核廃絶に向けた新たな変化です。

 その背景には、二〇〇〇年のNPT再検討会議で、核廃絶に向けての「明確な約束」が表明されたものの、〇五年の同会議で何の進展もなく、米国などへ強い批判の声が上がったことや、一方でキッシンジャー元国務長官ら米政府高官が核兵器廃絶を求めるなど、米国内での世論の変化があります。また、今回のサミットに参加する豪州のラッド首相が先月、核兵器廃絶を目指す「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」の設立を提案するという新しい動きも出ています。

 しかし、文書は米国・ロシア・英国・フランスという「G8メンバーである核兵器国がこれまでに行った現在、進展中の核兵器の削減を歓迎」し、同様の削減を「すべての核兵器国」が行うよう求めるという表現です。

 これでは、米国が「核削減」のらち外に置いている新型核兵器開発を容認することになりかねません。また、中印両国に一方的な核削減を求める内容とも読み取れます。

 核兵器の「削減」に言及する一方、エネルギー安全保障や気候変動対策を理由に、原子力発電の拡大を促進するのも重大です。

 原発は日本国内でも事故や災害が相次ぎ、しばしば停止に追い込まれているように、核エネルギーの「平和利用」の技術はたいへん不安定です。

 原発拡大の動きでは、インド政府が今週にも米印原子力協定を実行に移す可能性があります。米国による核技術の提供は、インド・パキスタンの核軍拡競争を加速させる危険もあります。(竹下岳)



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