2008年7月9日(水)「しんぶん赤旗」
洞爺湖サミット
温暖化対策、「世界」に転嫁
先進国の責任どこへ
米国追随の議長国日本
北海道洞爺湖サミットは八日、最大の課題としてきた地球温暖化問題について、温室効果ガス排出量を二〇五〇年までに世界全体で50%削減するビジョンを「UNFCCC(気候変動枠組み条約)のすべての締約国と共有し」、この目標を同条約下の交渉で採択するよう求めることで合意しました。これは「中国やインドが参加しない限り効果はない」とする米国の主張に制約されたものであり、長期削減目標について、先進国自身の取り組みを棚上げし、世界全体の責任に転嫁する危険があります。
大きな課題
いま世界は、京都議定書第一約束期間後の二〇一三年以降の温暖化防止の新たな国際協定を来年末までに合意するという大きな課題に直面しています。それを達成するには、今回のサミットで、五〇年までの長期目標での合意にとどまらず、それを確実に実現するために二〇年ごろまでの中期削減目標について合意することが強く求められていました。
このうち長期目標では、一九九〇年比で半減するには、先進国が80%以上削減することが期待されています。しかし今回の合意は、サミットに参加する先進国自身が、温室効果ガス半減のためにどんな取り組みをするかを具体的に明示することなく、世界各国に半減ビジョンの「共有」を求めただけ。議長国・日本の責任が問われる内容となりました。
拘束力ない
サミットはまた、先進国側が「自らの指導的役割を認識」して、「排出量の絶対的削減を達成するため、野心的な中期の国別総量目標を実施する」ことを決めました。
中期目標に関して先進国は、二〇年までに九〇年比で25―40%削減することが求められています。
今回の合意は、枠組み条約が規定する「共通に有しているが差異のある責任」に沿い、「先進主要経済国」と中国やインドなどの「途上主要経済国」がとるべき行動は「異なる」ことを認識し、先進国側が「野心的な国別総量目標」を実施するという原則を確認しました。
しかし「野心的目標を実施する」主体は「各国」です。この目標は「各国の事情を考慮に入れ」て実施すればよく、先進国全体でどこまで削減するかは合意されていません。欧州連合(EU)が求めてきた「拘束力ある目標」ともなっていません。
九日には、中国、インド、ブラジル、南アフリカなどの新興諸国を含め、温暖化問題でのサミット拡大会合や主要経済国会合(MEM)が開かれます。そこでの議論がどう展開するかに関心が集まっています。(坂口明)
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