2008年7月8日(火)「しんぶん赤旗」

規制改革会議「中間とりまとめ」

派遣労働是正に抵抗

流れが見えない異質の存在


 政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)が二日、年末に出す「規制改革推進のための第三次答申」にむけた「中間とりまとめ」を公表しました。このなかの労働分野の主張は、政府も含めて大きな流れになってきた派遣労働の規制強化に背を向けて、いっそうの自由化をとなえた異常な内容です。

 派遣労働の規制強化は、福田康夫首相や舛添要一厚生労働相が日雇い派遣を原則禁止するなど労働者派遣法の改正案を秋の臨時国会に提出することを表明しました。

 日本共産党が他党に先駆けて昨年十二月に、派遣法を派遣労働者保護法にする抜本改正要求を発表した以降、野党各党もあいついで改正案を出しました。自民・公明の与党も改正案の取りまとめに動き、規制緩和から規制強化へと変化がおこっています。

攻撃のほこ先

 規制改革会議の「中間とりまとめ」は、こうした流れに歯向かうかのように「労働者派遣法の改正による労働者派遣の拡大が格差社会を招いたと判断するのは短絡的」とか、「真の労働者保護は規制の強化により達成されるとは限られず」などと強弁しています。

 なかでも驚くのは、「派遣は臨時的、一時的な需給調整制度であるという原則に立ち返って本来は正規雇用を拡大していくことが先決であるとの意見もあるが」といい、派遣という働き方が一般に認知されてきているいま「労働市場の環境変化に対応して、見直していくべきである」という主張です。

 派遣労働が「臨時的・一時的な場合に限る」というのは、正社員を切って派遣を導入するやり方に歯止めをかける重要な原則です。日本共産党の志位和夫委員長が二月の国会質問で、この原則に変わりはないかとただしたさい、福田首相は「現在でも、この労働者派遣制度を臨時的・一時的な労働力の需給調整制度として位置づけていることに変わりはございません」と答えています。

 規制改革会議は首相の諮問機関です。その機関が、首相の発言に攻撃のほこ先をむけた「答申」を出そうというのです。「中間とりまとめ」は、さらに突っ込んで、この「臨時的・一時的」という原則を担保している派遣受け入れ期間の制限(三年まで)、派遣期間を超えた労働者に派遣先が雇用契約を申し込む義務や、派遣業種の制限などを撤廃する方向を主張しています。

廃止しかない

 実は、派遣期間の制限などの「担保」問題も、志位委員長が先の国会質問で、政府の立場は変わりないかと確認を求めています。舛添厚生労働相が「常用雇用の代替にしないことを担保している、これが政府の立場でございます」と明快に答えています。

 志位質問は、人間使い捨て労働の是正へ「潮目を変えた」といわれる反響を呼びました。それが規制改革会議にまで影響を及ぼしていたことがうかがえ、「中間とりまとめ」は、首相や厚労相だろうが構わず当たり散らしているという印象が色濃い内容です。

 それにしても東京・秋葉原での無差別殺傷事件もあって政府が派遣労働を規制する法改正に動き出した矢先、流れから取り残された異質物が政府内部から顔を出したような動き。この組織はもはや無用な存在となっており、廃止すべきです。(昆 弘見)



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