2008年7月7日(月)「しんぶん赤旗」
主張
日雇い派遣禁止
派遣法の抜本改革でこそ
自民・公明の与党が、社会的批判の大きい「日雇い派遣」を原則禁止する方向で合意し、厚生労働省も、労働者派遣法「改正」案の臨時国会提出へ動きだしています。
派遣労働者は不安定雇用のもとで、低賃金と無権利状態を強いられています。なかでも日雇い派遣は「ワーキングプア」(働く貧困層)の温床となっており、早急な対策が求められています。
日雇い派遣の禁止は当然ですが、そのためには労働者が人間らしい生活ができるよう、労働者派遣法の抜本改正が不可欠です。
働く者の権利守る規定を
派遣には、派遣会社に常時雇用されて特定の企業に派遣される常用型と、派遣会社に登録して仕事があるときだけ派遣先で働く登録型があります。登録型のなかでもとりわけ深刻なのが、携帯電話やメールで指示されて一日単位で職場がかわる「日雇い派遣」です。
仕事は、倉庫内作業や資材搬入など単純作業が多く、交通費は自前、派遣会社による法外な手数料のピンハネ、低賃金が横行しています。社会保険や労災保険、雇用保険もなく、労災も自己責任にされ、定宿をもてない「ネットカフェ難民」も多く、貧しさから脱却できません。社会とのつながりを断たれ、人間としての尊厳まで失ってしまうことにもなります。
日雇い派遣が広がったのは、いつでも自由に安く使い、解雇できる「使い捨て」労働力の確保という企業の身勝手さのためです。そうした財界・大企業の雇用戦略にもとづく労働者派遣法の制定と相次ぐ改悪が、それに拍車をかけました。
労働者供給事業は一九八六年の派遣法施行までは禁止されていました。九九年に派遣の対象業種が原則自由化され、二〇〇三年に製造業まで解禁されてから派遣労働者が急増し、三百二十万人に及んでいます。その七割が日雇いなど登録型です。
「日雇い派遣」が大きな社会問題になって以降、政府・与党でさえその禁止を口にするようになりましたが、派遣事業の原則自由化には日本共産党以外、すべての政党が賛成しており、その責任が厳しく問われなければなりません。
本来雇用は使用者が雇用責任をとることができる直接・常用を基本とすべきです。派遣は常用型を基本に派遣労働者と派遣先労働者との均等待遇をはかり、派遣元だけでなく派遣先の責任も強化するなどの措置が欠かせません。
日本共産党は現在の派遣法を「派遣労働者保護法」に抜本改正し、派遣は常用型を基本に登録型は専門的業種などに限定して厳しく規制するよう提案しています。こうした抜本改正を実現するなかでこそ、「日雇い派遣」の問題は解決できます。
日本社会の未来にも大事
総合研究開発機構は「就職氷河期」に急増した非正規労働者がこのまま老後(六十五歳以上)を迎えると生活保護の受給者になり、累計で約二十兆円追加が必要だとの報告を公表(四月二十四日)しています。企業も業務が継承できない状況が発生し、「非正規雇用の一方的上昇は望ましくない」と指摘しています。
労働・雇用の破壊を根本から見直すことは日本社会が直面する緊急課題です。その未来のためにも、派遣法の抜本改正が必要です。
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