2008年7月5日(土)「しんぶん赤旗」
6大橋事業撤回せず
「国土形成計画」を閣議決定
政府は四日、今後十年間の国土計画の方向性を定めた「国土形成計画(全国計画)」を閣議決定しました。
同計画は、二〇〇七年度中に閣議決定される予定でした。しかし、道路特定財源をめぐる論戦のなかで、日本共産党国会議員団が全国を六つの長大橋でむすぶ海峡横断プロジェクトを繰り返し追及、無謀な計画に批判が高まったことをうけ、国土交通省が修正作業を進めていました。
当初、六つの長大橋について、「長期的視点からの調査の推進、計画の推進等熟度に応じた取組を進める」としていたのを、「長期的視点から取り組む」と修正しました。「調査の推進」という文言はなくなったものの、プロジェクトそのものは撤回していません。
また、計画は「今後の具体的な道路整備の姿を示す中期的な計画に即して、高規格幹線道路をはじめとした基幹ネットワークの…効率的な整備を推進する」とし、「道路中期計画」に示された、二万キロ超の高速道路網をつくり続ける計画は変えていません。
国土形成計画は、福田内閣が決めた来年度からの道路特定財源の一般財源化や「中期計画」見直しの方針と根本的に矛盾するものです。
解説
高速道路網建設に固執
四日、閣議決定された「国土形成計画」からは、東京湾口道路など海峡横断プロジェクトの「調査の推進」という文言が消えました。
日本共産党国会議員団は、同プロジェクトの調査費に、道路特定財源から計六十八億円が投入されたことを明らかにし、徹底して批判してきました。三月十二日の日本共産党の穀田恵二衆院議員の追及に、冬柴鉄三国土交通相は調査の中止を明言。国土形成計画の閣議決定を延期し、文言を修正せざるを得なくなりました。
しかし、国土形成計画に、海峡横断プロジェクトは依然として残っています。
冬柴国交相は、個々の横断道路の調査は行わないが、「広く一般的な技術研究にテーマを限定するなど調査の重点化を図る」(三月二十八日の記者会見)と述べ、一般的な技術調査は続けるとしています。
政府・財界は、時期が来れば、無謀な大型事業を推進しようと着々と準備しています。
伊勢湾口道路に関する課題検討ワーキンググループでは、昨年一月、国交省中部地方整備局東海幹線道路調査事務所長の長田真一氏(当時)が、今後十年は事業着手できないと発言。
その上で、「伊勢湾口道路はやはり消したくない。何とかつなぎながら、いつ火がついても、すぐぱっと飛び出せるようにはしておきたい」と建設に執着する姿勢を示していました。
また政府は、国土形成計画に、「真に必要な道路整備は計画的に進める」と明記。主要都市間を連絡する高規格道路、地域高規格道路、拠点的な空港・港湾へのアクセス道路など、「道路中期計画」に即して、高速道路ネットワークを整備推進することを盛り込んでいます。
政府は、今秋に「道路中期計画」を見直して閣議決定するとしています。しかし、国土形成計画は、二万キロ超の高速道路網建設を今後十年間続け、“総額先にありき”の「道路中期計画」策定を示唆したものとなっています。
これでは今後十年間、道路建設に多額の税金が投入されることになります。
福田康夫首相は、五月に道路特定財源の一般財源化を閣議決定していますが、今後も際限ない道路建設を続けると宣言したに等しいものです。
福田首相が掲げた、道路特定財源を福祉や環境などに使うという一般財源化の方針を、自ら骨抜きにするものにほかなりません。(小林拓也)
海峡横断プロジェクト 日本列島に、東京湾口道路、伊勢湾口道路、紀淡連絡道路、関門海峡道路、豊予海峡道路、島原・天草・長島架橋道路の六本の海峡横断道路を建設しようというもの。それぞれ総額数兆円の事業費がかかる見込みです。